[Analysis]

SAPPHIREで5万5000人は何を感じたか

2005/07/12

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 「複雑性が増している」(SAPジャパン・ユーザー・グループ 幹事 村上公一氏)。SAPジャパン主催で7月7〜8日に開催されたイベント「SAPPHIRE '05 TOKYO」の来場者が抱いた気持ちを代弁すれば、こういうことになるのではないか。多くのSAPユーザーは、SAPが提唱する世界に期待をしながら、一方では不安も抱いているように思える。

 SAPはSOAを構築するためのミドルウェア基盤として「SAP NetWeaver」を2003年に発表。SAPアプリケーションだけでなく、他社のアプリケーション、レガシーアプリケーションをWebサービスで統合する方針を打ち出した。今年に入って、さらに「岩盤のような一枚岩のSAP R/3を小石のように分割して、NetWeaverをのりにしてサービスを統合する」(SAPジャパン 代表取締役社長 藤井清孝氏)ことを実現する「ビジネス・プロセス・プラットフォーム」(BPP)を欧米で発表した。SAPは2007年にも全製品のBPP対応を完了させるとしている。

 NetWeaver、BPPの取り組みは、ほかのアプリケーションベンダの先を行っているといっていいだろう。EAIツールなど専業のベンダではなく、業界随一の業務アプリケーションを持ち、多数のユーザーを抱えるSAPが、SOA環境への本格移行を打ち出した意味は大きい。SAP AGの会長兼CEOのへニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏は、「ビジネスに必要なソリューションのおよそ90%をカバーできる」としていて、NetWeaver、BPPの取り組みに自信を見せる。

 ユーザー企業の不安はSAPが先に行き過ぎることだ。SAP R/3のバージョンアップも進まないうちに、新しい環境への移行が進んでいくと、自社が取り残される気がする。情報システムの理想を示すビジョンは結構だが、既存のシステムも面倒を見て欲しい。こんなところがユーザー企業の本音ではないだろうか。

 ただ、SOAの一般的な特徴は、スモールスタートが許されるということだ。失敗のリスクを抱えながら、ビッグバン導入に挑戦するのではなく、自社のリソースが許すエリアから順次、SOA環境に移っていける。NetWeaverもビジネスプロセスの一部分から導入して、「統合の可能性を広げることができる」(SAPラボラトリーズ 副社長 ビル・パタキー[Bill Pataky]氏)。どのタイミングで、どのエリアから新しい環境に移っていくかの主導権はユーザー企業にある。複雑に見えるSAPの構想を解きほぐしながら、自社に必要な技術要素を見極める必要がある。延べで5万5000人が来場したSAPPHIRE '05 TOKYOは、SAP、ユーザー企業の双方に対していくつもの視点を投げかけた。

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