[Analysis]

トヨタの効率化は、ITとCGで実現?

2005/08/02

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 米ビジネス・ウィーク誌が7月に発表した2005年度の「世界企業ブランド番付」では、ソニーが前年の20位から28位に後退し、韓国サムソンに抜かれて話題になった。日本企業の最高位はトヨタ自動車の9位(ブランドポイントは前年比10%増)。米国企業以外では、ノキアの6位に次ぐ2番目だった。日本企業は28位のソニー、50位の任天堂と続く。また、トヨタの2005年上半期の輸出が、前年同期比7.4%増の101万7504台で上半期の過去最高を記録した。このように、“世界のトヨタ”は名実ともに世界に認められるトヨタになりつつある。その背景には、同社のお家芸ともいえる“効率化”があった。

 トヨタが“世界のトヨタ”を目指すのには理由がある。全世界の自動車市場は5937万台で、内訳は北米が1969万台、欧州は1906万台、日本は全世界の約10%に当たる583万台だ。つまり、日本だけを相手にしていると、例えシェア100%を取っても世界シェアでは10%程度にしかならない。トヨタの現在の世界シェアは10%なので、日本市場だけだとこれ以上伸びる余地はない。そこで、同社は世界での販売を増やし、2010年までに世界シェアを15%まで伸ばすことを目標にした。

 この数値を達成するためには、「さらなる成長と効率がポイントとなる」(トヨタ自動車 常務役員 天野吉和氏)だという。海外で成長するためには、その国や地域のニーズに合わせた車両開発が必須であり、現在よりも開発する車種が爆発的に増える。この開発需要を支えるためにはIT基盤の整備が必須とし、さまざまな改革を実施している。

 例えば、デザインや設計のDBを統一することで、従来のデザインから設計といった直列的な作業を並列化したり、作図をツールで自動化して時間を短縮する。設計で用いられたCADデータはXVLデータに変換され、そのデータを各部署がビューアを用いて閲覧・利用するなど、1つのデータを複数の用途で利用できるように改善した。また、3DCG技術の発達によって、設計図からCGの模型を作ったり、設計図の問題点をデジタル上で検討できる点が大きいという。

 CGやデジタルデータによる検討項目は、工場ラインにおける組み立て作業姿勢に無理があるかないかといった問題から、工場全体のレイアウトの効率化、ビジュアルマニュアルにまでおよび、すべてデジタル化することを目標に現在計画を進めている。そのほか、車両デザインやエンジン設計、振動実験、衝突実験などもデジタル化を進めている。

 直近では、同社のテレビCMにおける車両の一部や、LEXUSのWebサイトの見積りページやカタログページにも同社のデジタル技術が応用されているという。さらには、関連メーカーや海外拠点、海外パートナーまでデジタルデータのプラットフォームを統一することによって、データの有効活用を図る。2006年までには海外を含めた統一を目指す。このようにITを活用して効率化を進め、商売を進めるトヨタの姿勢は製造業以外にも役立つのではないだろうか。

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