[Analysis]

激戦CRM業界の行方は

2005/09/27

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 米オラクルが9月12日に米シーベル・システムズの買収を発表した後、CRM業界が揺れている。オラクルはシーベルのCRMアプリケーションを自社製品に取り込み、ピープルソフト製品などと組み合わせた製品を出す方針を示した。一方、オンデマンド型CRM業界で先行するセールスフォースは新サービス「the Appexchange」を発表するなど、新サービス開拓に乗り出し、さらなるシェア拡大を目指している。

 オラクルはシーベル買収発表後のイベント「Oracle OpenWorld」で新しいアーキテクチャ「Oracle Fusion Architecture」を発表し、ミドルウェア製品を拡充して他社製品との連携を強化する方針を示した。この方針の下で、ピープルソフトとオラクル製品の統合計画「Project Fusion」にシーベル製品も加え、着々とセールスフォース追撃体制を整えている。

 一方のセールスフォースは「the Appexchange」を発表し、同社以外のベンダがアプリケーションを提供できる場を提供する。これにより、セールスフォースが提供しきれない“かゆい所に手の届く”アプリケーションや新機能が登場し、利便性が増す可能性が高い。つまり、セールスフォースは自社だけでなく、ほかのベンダの開発力も借りて同社サービスの機能拡充を図る方針だ。さらに、従来のASPサービスでは介入する余地の少なかったシステムインテグレータに、アプリケーション開発で市場に参入するきっかけを与えている。

 セールスフォースCEOのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏は、オラクルが買収したピープルソフトやシーベルのCRMアプリケーションが複数のプラットフォームやデータベースをサポートしている点について言及し、「例えばシーベルのCRM OnDemandはIBMのDB2で動いている。これをオラクルのDBに変更するためには莫大(ばくだい)な時間がかかる」と指摘した。この点についてオラクルのCEO ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏は、オラクル以外のデータベースを次世代の統合アプリケーションで将来サポートする可能性を「フィフティ・フィフティ」と語っており、いまだ決めかねているという。

 もし、オラクルが他社データベースをサポートする場合、同社は統一された「Project Fusion」と複数のプラットフォーム対応によって、セールスフォースと同じ強みを持つことができるだろう。現在、セールスフォースのユーザーは1万6900社、30万人弱。シーベルの「CRM OnDemand」のユーザーは2005年6月時点で4万人弱。現在の数字ではセールスフォースが優位だが、オラクルのマーケティング次第では勢力図が大きく塗り変わりそうだ。

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