[Analysis]

IP電話の「裏のテーマ」とは

2005/10/04

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 ドラマ「24」の主人公の職場である「テロ対策ユニット」には、某大手ネットワーク企業のIP電話システムが導入されており、そのメリットも大いに生かされているように見える。スタッフはどの机に移っても自分あての電話を受けられるし、ユーザー認証に基づいて秘匿性の高い電話回線が利用できる。しかし、残念ながら、通常の企業ではここまで格好のいい仕組みが業務上必要とされることはない。大企業や中堅企業におけるIP電話の導入機運は相変わらず根強いようだが、「そこにIP電話があるから」導入するというスタイルでは、将来に禍根を残す事態になりかねない。

 IP電話のメリットを、明確に説明するのは難しい。IP電話が持ち上げられた当初は、最大の導入メリットとして、通話コストや設備のTCO削減が大きく取り上げられた。しかし、IP電話化によって、必ずしも外線通話コストが目に見えて下がるわけではない。ケース・バイ・ケースである。第2に、IP化が外線通話コストを下げるとしても、内線までIP電話システムに入れ替える必要があるかどうかはまた別の問題だ。内線のIP化のメリットとしては、人事異動のたびに発生するPBXの設定変更コストが削減できることが指摘される。しかし、実際にはIP電話システムでも、設定変更をインテグレータなどに任せているケースが多い。もちろんそこにはコストがかかる。

 だが、IP電話化を、電話の世界だけのコスト・ベネフィットで考えるべきではないと私は考える。IP電話の導入とは「データと音声の統合」であり、「総務から情報システム部への職務の移管」である。だからこそ、企業におけるネットワークインフラ強化のチャンスととらえるべきだし、これが企業におけるIP電話導入の裏のテーマの1つとなる。いまや社内外のコミュニケーションの中心は電子メールであり、各種データベースやグループウェアへのアクセスにはデータネットワークは不可欠だ。まさに企業における血管の役割を果たすようになっている。にもかかわらず、コストの正当化がしにくいために、ネットワークインフラの信頼性と安定性を確保するのに十分な予算や人件費が与えられていないのが現状ではないだろうか。

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