[Analysis]

家電見本市のIT企業たち

2006/01/11

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 IT業界はその短い歴史の中でいくつかの大きな転機を迎えている。いまはまさに新たな過渡期だといえる。

 先日米国ラスベガスで行われたInternational CES(Consumer Electronics Show) 2006には、IT業界の名だたる舵(かじ)取り役が登場した。米マイクロソフトのビル・ゲイツ(Bill Gates)氏に、米グーグルのラリー・ペイジ(Larry Page)氏、米ヤフーのテリー・セメル(Terry Semel)氏。5〜6年前なら家電見本市になど見向きもしなかった彼らが家電といういわば旧時代のハードウェアに興味を示すのは、インターネット技術が枯れはじめたことの証でもある。

 インターネット端末としてのパソコンで培われたさまざな技術は、パソコンのような汎用機械だけではなく、携帯電話やテレビなど用途に特化した機械にも応用できるようになっている。いくらパソコンが簡単になったとはいえ、テレビの簡便性にはかなわない。一方、インターネットはさまざまな情報を伝達するインフラストラクチャであり、端末は必ずしもパソコンに限定されない。情報の受け手の裾野が拡大すればするほど、インターネット上で展開するビジネスが成功する可能性は高まる。このことはグーグルが身をもって明らかにしている。インターネット端末がパソコンから携帯電話、家電へと種類を増やしていくのは当然のことだといえるし、IT企業がConsumer Electronics=家電に興味を持つのも当然のことだろう。

 ところで、International CES 2006で新サービスを発表したグーグルやヤフー、そしてマイクロソフトなどの「21世紀型のメディア企業」(ヤフーCEO テリー・セメル氏)を標榜(ひょうぼう)する企業の特徴は、具体的な何かを生産するのではなく、情報の仲介者となることで利益を生み出そうとすることにある。ビル・ゲイツ氏は「すべてはインターネットへと向かう」とInternational CES 2006の基調講演で述べた。情報の媒介で利益を生む組織に特定のプラットフォームは必要ない。この流れは今後もさらに加速するはずだ。

 なお、1980年代中頃に柄谷行人はいまの時代を象徴することをいっている。「(中略)そこでは、人びとは何か実質的なものを生産しているのではなく、たんに差異=情報を生み出しているだけのように感じています」(『言葉と悲劇』)。確かにいまはそういう時代なのかもしれない。

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