[Analysis]
「IT新改革戦略」の意味するもの
2006/01/31
あまり報道されていないが、1月19日に「IT新改革戦略」が明らかにされた。首相官邸のIT戦略本部の策定による、「e-Japan戦略」の後を継ぐIT利用の青写真である。
「改革」という言葉を名前に取り込んでいるように、ITで構造改革を推進することが新戦略の眼目となっている。医療、エネルギーや資源の効率的活用、災害対策、交通情報・制御、行政、経営、遠隔教育・労働といった分野を挙げ、これらにおいて具体的にITを活用していくことをテーマとしている。あえて政府全体の取り組みとして具体的な目標を定め、行動しようとしていることに期待したい。
2001年に策定された当初のe-Japan戦略は、「5年以内に少なくとも3000万世帯が高速インターネットアクセス網に、1000万世帯が超高速インターネットアクセス網に常時接続可能な環境を整備する」ということを目指した。結果的に、日本はこの目標を大幅に超える「ブロードバンド大国」になった。しかし、これをe-Japan戦略のおかげだと思う人はあまり多くないだろう。民間の努力に負うところが大きかったからだ。
新戦略で列挙された分野のうち、交通情報・制御(ITS)や経営(部門間・企業間の連携)についても、e-Japan戦略におけるブロードバンド化目標と同様に、政府は補助的な役割を果たすしかない。一方、行政(電子自治体の実現)については、実は当初のe-Japan戦略からずっと取り上げられてきたテーマであり、政府内の努力によって達成できることなので、実現に向けて努力してもらうしかない。
注目されるのは医療だ。新戦略では、「遅くとも2011年当初までにレセプトの100%オンライン化」することとされている。これは医療保険制度運営コストの削減に直結する問題で、実現されればインパクトは大きい。
しかし、国民の立場からすると、最も期待したいのは「統合系医療システムを200床以上の医療機関のほとんどに導入し、業務の効率化、医療安全および診療情報の提供を実現する」という部分である。これが最終的には患者にとって各医療機関の状況や実績を知り、診療を受ける際の材料提供につながってくれればと思う。
患者は必死にインターネットで医療情報を追い求める時代になった。医療従事者の側も、レセプトに関して防戦に回るだけでなく、よりよい医療のためにITを積極的に活用してほしいし、政府もこれを支援してほしい。
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