[Analysis]

中国市場参入の難しさ

2006/02/07

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 週刊モーニングに連載されている「常務島耕作」で初芝電産は、島耕作指揮のもと、中国市場への参入を上海地区から中国全土に拡大しようとしている。このマンガでは、日本企業による中国市場参入の難しさが実にリアルに描かれているのだが、初芝電産が中国市場で直面したさまざまな困難は、現在の中国でビジネスを展開する企業の困難とも十分に重ねて見ることができる。

 日本企業は高度経済成長期に米国、ヨーロッパおよび東南アジア諸国へと果敢に進出した歴史を持つ。つまり、日本企業には海外市場に現地法人を設立し、運営していくノウハウが蓄積されているはずだ。しかし、この成功ノウハウを現在の中国市場に適用するのは簡単なことではないらしい。野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 副本部長 此本臣吾氏が「(市場の状況変化の)スピードが違う。労働力の流動性も特異」というように、中国市場の特異性は現地法人を設立して事業を展開しようとする日本の企業を悩ませている。

 NRIとサーチナ総合研究所(SRI)の調査によると、中国ではグローバルで競争優位性のある商品やサービスしか生き残れないという。例えば、頻繁な技術革新で現在の社会を牽引する事業分野(ITやデジタル家電)において、日系企業が強い存在感を示せるのは実はデジタルカメラくらいである。今後注目度が高まるとされる環境分野、サービス分野で日系企業がどの程度世界と伍(ご)していけるか。このことは中国市場での成功の要因にもなると両社は分析している。

 中国市場に本格参入を望む企業にとって、現地法人設立は大きなマイルストーンだが、現地法人を運営していくことは設立以上に難しい課題である。中国人の優秀な人材は20代から30代始めの10年間で将来的なキャリアを築く基盤を整えたいと考えている。彼らには、企業に対する帰属意識はほとんどなく、(企業の)将来性が感じられないとなれば躊躇(ちゅうちょ)なく辞めていく。このため、中国人社員の意欲や能力を生かす事制度を確立し、現場に合わせて運営していける体制が不可欠だと、此本氏はいう。そして、成功している企業(サントリー、コマツなど)ほど、現地法人のトップを現地人に任せているという共通項があると指摘する。

 島耕作の初芝電産が中国全土でビジネスを展開するのはこれからである。おそらく、多くの日本企業にとっても中国市場の本格進出は今後の課題であるはずだ。NRIおよびSRIの調査にもあるように、中国市場は研究段階であるに過ぎないが、なかなか前途多難な市場のようである。

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