[Analysis]
スパイウェア対策ソフトについて思うこと
2006/02/21
2月17日に発表されたMM総研の調査結果によると、企業の情報システム部門の91%がスパイウェアの脅威や危険を認識しており、実際にポップアップ広告の強制表示といった軽度の被害には39%が遭っていた。それにもかかわらず、スパイウェア専用の対策ソフトで対策している企業はわずか8%であり、ウイルス対策ソフトに搭載されている簡易版スパイウェア対策ソフトの導入率83%に比べ、明らかに少ない数値だったことが明らかになった。
昨年(2005年)ごろより、スパイウェアで金銭的被害が生じる事件が頻発している。7月には複数の金融機関の顧客にスパイウェア付きの電子メールを送信し、不正送金させる事件で1000万円を超える被害が出た。また、9月〜10月には「セキュリティ強化のため」と称したCD-ROMを送付し、インストールしたPCから不正送金された事件も発生した。
このように、昨今ではスパイウェアによる金銭的な実被害が多く出ているのが現状だ。これに合わせて、セキュリティベンダ各社も、従来のウイルス対策ソフトに付属するスパイウェア対策ソフトではなく、スパイウェア対策専用のソフトを発売するケースが増えている。代表的なものには、米国のリテール市場で68%のシェアを持つ米Webroot Softwareや、アークンの「AntiMalware」、CAジャパンの「PestPatrol」、トレンドマイクロの「スパイバスター」などが挙げられる。CAジャパンやトレンドマイクロなどは、スパイウェア対策ベンダを買収し、ラインアップに加えたケースだ。
ただし、トレンドマイクロはすでにウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」にスパイウェア対策機能を搭載しており、スパイバスターとの差別化が難しくなっている。この点について、トレンドマイクロ バイスプレジデント 沢昭彦氏は、「ウイルスバスターのスパイウェア対策機能でも十分だが、さらにワンランク上のスパイウェア対策を求めるユーザーに提供するソフトだ」と説明した。実際に、スパイバスターにはウイルスバスターに搭載されていない、駆除が難しい「CoolWebSearch」の専用駆除ツール「CWShredder」などが搭載されているなど、スパイウェア専用ソフトらしい機能もある。
筆者は自宅PCでウイルスバスターを長年使用しており、現在のバージョンではスパイウェア対策機能も備わっているほか、ある程度自分でも警戒しながら利用していたため、「スパイウェアに感染していないだろう」と考えていた。しかし、トレンドマイクロからスパイウェア専用対策ソフトがリリースされたと聞いた際には、「現在のスパイウェア対策では十分ではないのでは」という多少の不安におそわれ、リリースされた直後にインストールし、全領域検索を実施した。結果、スパイウェアが発見されたなかったときには「ほっとした」というのが正直な感想だ。機能面で使用した感想としては、「定義ファイルがウイルスバスターと違う」「定義ファイルをアップデートするとアプリケーションの再起動が必要」「定義ファイルアップデート時にワンクリック必要」など、いくつか気になる点もあった。定義ファイルは、いずれウイルスバスターと合わせて配信されるようになるという。
今後、スパイウェア被害はますます増大し、より金銭を狙ったものが増えてくるだろう。それに合わせて、スパイウェア専用対策ソフトの数も増えるだろうが、トレンドマイクロのケースのように、1社で複数のスパイウェア対策ソフトを有する場合には、ユーザーの不安をあおることのないような、分かりやすい製品の説明が必要だ。
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