[Analysis]
業務システムのWeb化とSAPの戦略
2006/05/02
SAPジャパンは4月25日、ホスティング型の CRMアプリケーション「SAPCRM On-Demand」を発表した。同社の戦略は、導入が容易な「SAP CRM On-Demand」を通じて、自社運用型の「mySAP CRM」へと移行を促すこと。ターゲット企業も従業員数500人以上を想定している。「mySAP CRM」と同一のアーキテクチャ、データモデル、ユーザーインターフェイスを元に構築されており、同社では、移行に伴うデータ損失やプロセスの中断、変更管理といったコストの低さをアピールしながら、ホスティング型アプリケーションベンダの台頭をけん制している。
パッケージソフトウェアに対して、機能をインターネットを通じたサービスとして提供するソフトウェアを米国では「SaaS:Software as a Service」(サービス型ソフトウェア)と呼んでいる。SaaSベンダで有名なのはSalesforce.comとネットスイートだろう。
特にネットスイートは3月8日に日本法人を設立し、日本市場に本格的な参入を果たしたばかり。同社 社長兼CEO ザック・ネルソン (Zach Nelson)氏は記者会見で、パッケージソフトとSaaSの成長率を比較したデータを示しながら、市場はこれから成熟すると主張する。同社が最初に投入するのは「NetSuite CRM」と「NetSuite CRM+」、およびスイート製品である 「NetSuite」と「NetSuiteSmall Business」。機能を拡張しながら、いずれは企業の基幹システムをホスティングサービスでまるまる面倒を見るという構想を持っている。なお、ネットスイートが当初狙う市場は従業員500人以下の中・小規模企業だ。
両陣営の共通点は、いずれのサービスも導入コストの低さと導入期間の短さをメリットとしながら、将来的な機能拡張のしやすさを前提にしている点である。前者はインハウス型を指向し、後者はあくまでホスティング型に将来性を見ている。
ネルソン氏が指摘するように、成長率の高さをみれば、ホスティング型業務システムの普及はインターネットインフラの信頼性が上がるにつれて加速していく可能性が高い。ERPのトップベンダであるSAPは現時点では、ホスティング型の可能性を、中小規模企業向けおよび機能の絞り込みという限定付きで認めたに過ぎない。巨大な船が方向転換をするには時間がかかる。市場の状況次第では、同社の戦略にも大きな方向転換が訪れる可能性がある。
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