[Analysis]
Office 97の悪夢は……
2006/06/06
マイクロソフトの次期Office製品「the 2007 Microsoft Office System」(Office 2007)が今年10月に登場する。機能をタブにまとめた「リボン」や新製品の「Groove」などが注目されるが、マイクロソフトが最も力を入れているのは既存のOffice環境との互換性だ。「トラブルが発生したOffice 97の悪夢は繰り返さない」。これがマイクロソフト Officeチームの合言葉といっていいだろう。
Office 2007の特徴はファイル形式がXMLベースの「Open XML Formats」に変更されることだ。Word、Excel、PowerPointのファイル形式が変更する。拡張子は、docx、xlsx、pptxなど従来の拡張子に“x”をつけた形式。ZIPで圧縮されたファイルの中にXMLのリファレンススキーマ、カスタム定義スキーマ、イメージ情報、マクロなどのファイルを収納する。それぞれのファイルはOfficeアプリケーションを使わずにアクセス可能で、業務アプリケーションとOfficeファイルの連携が容易になる。マイクロソフトはOpen XML FormatsをEcma(欧州電子計算機工業会)に提出していて、標準化を目指している。
マイクロソフトがOfficeのファイル形式を大幅に変更するのはOffice 97以来だ。Office 97の出荷時にはファイル形式の互換性の問題でトラブルが発生した。Office 97で作成した文書を過去のOffice製品で正しく開くことができないなどの問題だ。マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部 シニアプロダクトマネージャ 吉村徹也氏は「Office 97の際は過去のバージョンと同じ拡張子を使ったのでトラブルが発生した」と説明する。この教訓からOpen XML Formatsでは拡張子を変更し、ユーザーが識別できるようにする。マイクロソフトは「ファイル形式が変わるのではなく、ファイル形式を新しく追加するという認識」だ。
Office 2007で作成した文書を以前のバージョンのOfficeで読んでもらう場合、ファイル形式をdocなどの「office 97-2003形式」で保存する。Office 2007同士ならOpen XML Formatsでやりとりする。以前のバージョンのOfficeを使っているユーザーがOpen XML Formatsを編集、保存するにはマイクロソフトが配布する「Compatibility Pack for Microsoft Office 2007 File Formats」を利用する。同ソフトウェアはマイクロソフトのWebサイトで入手できるほか、旧OfficeでOpen XML Formatsのファイルを開いた際にメッセージが出て、同ソフトウェアのダウンロードサイトに誘導される。ただ、同ソフトウェアが利用できるのはOffice XPとOffice 2003のみ。
マイクロソフトは旧バージョンのファイルを保有する企業向けに、ファイルがOpen XML Formatsの形式に変換できるかを分析する「Office Migration Planning Manager」や、ファイルを一括変換する「Office File Conversion Tool」も配布する予定。マイクロソフトは「多くの顧客から以前のバージョンとの互換性について問い合わせをもらっている」(吉村氏)といい、「下位互換性を考慮しながらXMLの価値を提供する」ことに力を傾ける。
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