[Analysis]

サッカーとシステム開発プロジェクト

2006/06/27

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 日本代表がワールドカップ一次リーグを敗退した要因についてさまざまな分析がなされている。監督の采配ミスという指摘や、ひとりひとりの選手の力不足という意見など実にたくさんの可能性が探られている。日本代表を巡るこのような一連の状況を見ていると、システム開発プロジェクトを巡る状況にとてもよく似ていると感じる。敗因、つまりプロジェクト失敗の最大の原因はいったい何なのか? 試合終了後(プロジェクト終了後)に誰しもそのことを考えるが、一概に「これだ」と言い切れるほど確固としたものはなかなか出てこない。

 システム開発プロジェクトの方法論にあたるものがサッカーにもある。例えば、対クロアチア戦では、4-4-2というシステムを採用、守備に重点を置ながら日本の強みであるスピードを生かしてのカウンターによる得点を狙った。このシステムはおそらくクロアチア攻略の方法論としては理想的なものだったかもしれないが、現場では常に予想外のことが起こる。カウンターによる得点がうまくいかない場合はどうするか。緊急の事態をいち早く察知し、指揮官は柔軟な対応を行わなければならない。方法論はその場の状況に合わせてカスタマイズすることが求められる。

 開発要員のスキルをうまく把握し、適切な配置を考えることはシステム開発プロジェクトを成功に導くために極めて重要な要素となる。プロジェクトマネージャは、方法論の運用と同時に、個々のスタッフの状況とチーム全体の雰囲気をリアルタイムで把握しているべきだ。クロアチア戦後半で福西に代わり、途中出場した稲本は身体を張ったプレーでチーム全体を活性化させた。適切なスキルをちょうどよいタイミングで投入することで、チームが生まれ変わる場合がある。もちろんその逆もしかりである。

 個々の開発者が技術力の向上を図り、全体として技術力の底上げを図ることもシステム開発プロジェクトを成功させるためには欠かせない。ただし、個々の技術に傾倒しすぎることはチーム全体の成功には必ずしも結び付かない。「むしろそこそこの技術ながら、技術者それぞれで良好なコミュニケーションがとれている開発チームの方がいい仕事をする」とは、ある大手システムインテグレータのベテランプロジェクトマネージャの言である。

 技術よりも人だ、という声は開発現場からよく聞かれる。そして、人と人との関係が実はプロジェクトを成功に導くうえで最も基本的なものだという声も。今回のワールドカップについても、識者の優勝予想のコメントでは、個別の技術力で優れたチームよりも総合力で上回るチームが勝つという意見が多いようだ。

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