[Analysis]
日本は国際的M&Aに課題多し
2006/07/25
「どのような基準で見ても、企業買収分野での活動は著しく拡大」していると、アクセンチュア&エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの2006年グローバルM&A調査は、そのレポートの冒頭で記述している。このレポートによると、最近の買収案件は国際的規模のものが大半を占めているという。アクセンチュアでは、この傾向は継続する可能性が高いと指摘する。
注意しなければいけないのは、このレポートの調査対象企業が、米国企業やヨーロッパ、スカンジナビアに本拠を置く企業だということだ。彼らにとって、国際的な企業買収というのは、業務の収益力を確保するため、あるいは、所期の企業戦略目標を達成するための1つの手段である。鉄鋼業界では先ごろ、世界最大手のミタル・スチール(オランダ)が、業界2位のアルセロール(ルクセンブルク)を合併し、その結果、粗鋼生産量1億トン強の巨大企業が誕生した。このような例は今後も引き続き起こるだろう。市場のグローバル化は、合併・買収という形で業界の再編を促している。
同レポートでは、今後3年間で最も関心を集めているM&A市場として、金融業、製造業、エネルギー・天然資源、IT・電気通信市場が挙げられた。さらに、IT・電気通信市場で、M&Aに関係が深い国では、米国が67%でトップ、そのあとに、インド、中国、英国、ロシア、ブラジルなどが続いた。8位にようやく日本が登場する。金融業、製造業、エネルギー・天然資源では、日本の名前さえ登場していない。
この結果が端的に表しているように、日本は必ずしもM&A対象地域として世界の企業からは魅力的だと思われてはいない。IT・電気通信市場で、かろうじて名前が挙がる程度の存在なのだ。
日本市場でM&Aが行われていないわけではない。最近の新聞紙面をにぎわしている王子製紙の北越製紙に対するTOB(株式公開買い付け)や、ミタル・スチールの巨大化に対抗するため新日本製鐵が掲げた提携・M&A戦略の加速などをみてもわかるように、市場のグローバル化の影響は日本企業にも少なからず影響を及ぼしている。しかし、いずれも国内案件にとどまっているのが現状だ。アクセンチュアが日本企業を対象に行ったM&Aに関する調査によると、「最近のM&A案件は国内案件である」との回答が84%にのぼった。
「実際問題として」と同レポートは記述する。「国際的M&A案件の実施能力については、(日本企業には)極めて悲観的な意見が強い」。「効果的な機構設計と変更管理制度を企画立案・実施できる」企業や、「外国市場における買収企業の統合に必要な要素を深く理解している」企業も少ない。「自社と買収対象との間の文化的差異に対応できる」企業もほとんどないのが現状だという。
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