[Analysis]
「日本版SOX法回避で非上場」に現実味
2006/08/01
「日本版SOX法対応にこんなに手間やコストがかかるんだったら、もう非上場にしたほうがいいんじゃないかなんて意見も経営会議で出ているんですよ」。ある製造メーカーの情報システム部長は冗談交じりにこう語った。2008年4月から公開企業に適用される日本版SOX法。負担の大きさのわりに企業が得られるメリットがはっきりしないため、企業の間には困惑と不信が広がっている。
もちろん、日本版SOX法には企業にとって多くのメリットがあるのは間違いない。日本版SOX法の目的の1つは「業務の有効性及び効率性の達成」で、内部統制を整備することで業務の効率性が向上することをうたっている。また、コンサルタントなどは内部統制整備の次のステップとして、財務報告だけでなく全社業務を対象にした「エンタープライズ・リスク・マネジメント」の重要性を訴えている。
ただ、このようなお題目があっても大きなコスト負担が予測される内部統制の整備に企業は及び腰だ。野村総合研究所(NRI)が2月21日に発表した調査によると、調査対象の上場企業の80%以上が日本版SOX法の対応負荷が「非常に大きい」「大きい」と回答。さらに47.1%の企業は日本版SOX法対応について「(同業など)他社と同等レベルを確保」、36.8%の企業が「あまりコストをかけずに必要最低限レベルは確保」と答えていて、消極性が目立つ。
金融庁による日本版SOX法の実施基準(ガイドライン)の公表遅れも企業の対応を混乱させている。当初は2006年春にも公表されると見られていた実施基準の公表は遅れに遅れている。6月の金融商品取引法の成立直後に公表される説や、7月中旬に草案を公表する説などがIT業界にはあったが、何も出なかった。最近有力視されているは、9月に草案公表し、パブリックコメントを実施。10〜11月に決定というスケジュールだ。
日本版SOX法の整備プロジェクトを始めた企業でも、ガイドラインとなる実施基準が公表されないと具体的な詰めの作業が行えない。日本版SOX法の意義が理解されないまま混乱が続き、負担コストだけが膨らむことになると、「日本版SOX法回避で非上場」の現実味が増してくるだろう。
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