Analysis
こんなに進んでる!? 韓国のIT事情
2007/05/07
世界に先駆けて高速インターネット回線を普及させ、インターネット先進国となった韓国。今回は韓国ソウルで記者を務めている崔喜樂氏などに、韓国のIT事情の表と裏を聞いた。
韓国はいつの間にかインターネット後進国!?
1990年代後半から始まった国家的な取り組みによって、一躍世界で最もブロードバンド化が進んだ韓国。しかし、ADSLが普及した半面、光インターネットが普及しない弊害が現れているという。崔氏によると、現在ソウルなどで主に普及しているのは最大100Mbps程度の速度がでるというアナログ電話回線経由のサービス。この回線を月額4000〜6000円程度で利用している。実行速度でも数十Mbpsの速度が出るため、ほとんどのユーザーがこの回線速度で満足しているという。
この状況で普及が遅れているのが光回線だ。現行のアナログ回線の実行速度が数十Mbps出ているため、光回線に乗り換えるメリットが薄く、普及が遅れているのだ。普及が遅れているためベンダもなかなか投資できず、まだまだ光回線が敷けてない地域も多いという。この点について崔氏は「日本も光回線は普及段階だが、東京などの都心部ではほとんど光回線が行き届いている状態だ。この点が光回線のインフラ準備もできていない韓国と大きく違う」と説明した。
ソウルでは現金が要らない!? 日本よりはるかに進むコインレス
一方、韓国の方が進んでいる分野もある。その一例が決済関連サービスだ。特にモバイル決済系サービスの充実度は、日本よりも数段進んでいる。例えば、ソウル市内の地下鉄では、日本のSuicaやPASMOのような非接触ICカードで乗車可能だが、日本と異なるのはほとんどがクレジットカードと一体になった後払い精算方式のカードとなっている点だ。日本のクレジットカードにもSuicaなどが付いているものもあるが、これらはあくまでも前払い形式だ。オートチャージ機能に対応していない場合には残高を気にする必要がある。韓国では後払い形式なので使った分はクレジットカード利用分として請求される。このため、プリペイド方式のように残高を気にする必要がない。
また、韓国ではクレジット決済の普及度が日本よりもだいぶ進んでいるので、「韓国のサラリーマンでクレジットカードを持っていない人はまずいないだろう。そのくらい必需品だ。交通機関はもちろん、食堂やコンビニでも使えるので1カ月現金を持たずに生活することも可能だ」(崔氏)と説明した。このように、日本よりもクレジットカードが普及している韓国だが、さらに普及しているのがモバイル決済だという。
日本でも最近、携帯電話で買い物したり、オークションに参加するユーザーが現れてきたが、韓国ではモバイルバンキングやモバイル決済がさらに浸透しており、現在進行形でさまざまな新サービスが登場しているとした。
最大の欠点はコンテンツ不足
このようにブロードバンド環境やモバイル環境など、ITインフラに関しては問題を含みつつもかなり進んでいるイメージの韓国だが、崔氏は最大の弱点は“コンテンツ”だと指摘する。
同氏は、「韓国はオンラインゲームなどでは日本を先行しているものの、間もなく日本に抜かれる日も近い」と危ぐする。その要因は、「任天堂やソニーのゲーム機の強さと、和製アニメやアイドルの強さ」にあるという。韓国のオンラインゲームはPC向けのものが多く、ゲーム機向けのものは少ない。同氏はこの点について、「今後はオンラインゲームもゲーム機向けのものが主流になるはずだ。そうすると日本のメーカーが台頭してくると思う」と分析。また、韓国でも人気のある日本のマンガやアニメといった世界に通用するコンテンツを多く持つ日本が今後、インターネット上のコンテンツサービスでも優位に立つと説明した。一方の韓国側は、日本よりも強い映画やドラマなどでこれらに対抗していきたいとした。
そして、崔氏は今後の日本と韓国について、「いまや日本と韓国はブロードバンド環境では、世界でも1位、2位を争うレベルだ。この環境を生かし、競争しつつも米国に負けないコンテンツやサービス作りをしていきたい」とコメントした。
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