[Analysis]

SOX法で迷走するアメリカ、日本は?

2007/07/09

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 昨今、上場企業の注目を集めている日本版SOX法が、米国で2004年より実施されているサーベンス・オクスリー法(SOX法)に倣って整備されたのはご存じの通りだ。その米国では、SOX法にまつわる新しい監査基準「AS5」が5月23日に発表された。先行する米国におけるSOX法事情は、どのようになっているのだろうか?

 米国SOX法では、対象企業に対して「内部統制報告書を作成すること」や「内部統制に関して、独立した公認会計士の監査を受けること」「財務報告書類にはCEOとCFOが宣誓の署名をすること」「内部統制監査を監視するためにPCAOB(公開会社会計監視委員会)を設置すること」「虚偽記載がある場合には、経営者に実刑と罰金が科せられること」などを求めている。そして施行後にPCAOBが、監査基準「AS2」を作成した。

 このAS2が米国企業を苦しめた。AS2が厳しい内容だったうえに、それを参考にする監査人が、この基準をさらに保守的に解釈したためだ。そのため、米国では多くの企業が数億円規模の投資をしたにもかかわらず、実施1年目の2004年には16%の企業が「内部統制が有効ではない」と評価されてしまった。そして、“厳し過ぎる”と感じた企業がロビー活動などを通じてPCAOBへ反発した結果、AS5が採択されるに至った。しかし、専門家はAS5でも依然として厳しいと評価している。

 このように、米国SOX法では厳し過ぎる監査基準の下で、かなりの企業が対応に苦労したといわれている。日本では立法時にこの点を考慮し、企業負担を軽くしたといわれているが、実施基準などを見る限りあいまいな表現も多く、最終的には監査人の判断に委ねられる部分が大きいと思われる。その際に、米国のように基準を保守的に解釈すると、米国のように厳しい結果になる可能性もある。

 刻々と施行までの時間が迫るなか、日本版SOX法の対象となる上場企業のうち、一部の大企業/先進企業を除いた多くの企業では、現在まだ文書化の作業を進めている状況だといわれており、施行前にテスト監査を受ける時間的な余裕がない企業がほとんどだろう。現状では推測の域を出ないが、もし監査人が厳しい判断をした場合、多くの企業がさらなる投資を強いられ、米国のケースのようになる可能性もある。

(@IT 大津心)

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