[Analysis]
自動車保険もデータ量の時代
2007/11/12
筆者は自動車の運転が好きで、学生時代などは年間3万キロは運転していた。自動車そのものも好きだが、運転しているだけでストレス発散できるタイプだ。それが社会人になり、乗る時間の減少やガソリンの高騰などでいまでは年に3000キロも乗っていない。そんな中、ガソリン代の次にげんなりするのが自動車保険の更新だ。保険料は20代前半に比べて何分の1かになったものの、乗る機会が減った割には割高に感じてしまうからだ。しかし、そんな筆者に希望を与えてくれるような保険が英国にはあるようだ。
英国のNorwich Unionをご存じだろうか。同国の自動車保険シェア14%を持つ最大の総合保険会社だ。そのNorwich Unionが、英国で学生向けに画期的な可変料金制自動車保険を開始している。この自動車保険は、契約車両に専用のGPS機器を取り付けて走行パターンを追跡。走行パターンや走行量に応じて毎月の保険料が変化するというサービスだ。例えば繁華街や速度超過の走行が多いと、リスクが高いために保険料も増加するという仕組みだ。逆に1カ月間ガレージの中にあると、最低限の保険料で済む。
このシステムを始めるために、同社ではリスクを算定。担当者は、「英国の大学生の走行データを集計すると、圧倒的に金曜深夜の事故率が高い。これはパーティに参加し、飲酒後に運転している可能性が高いからだと推測される。また、社会人と比較して速度も高めだ」といった例を挙げた。このGPSはかなりの精度で、「右車線を時速○○キロで走行していた」や「△△のコーナーを進入角□□度○○キロで進入した」まで分析できるという。従って、事故原因追究にも大いに役立つ。
一方、このシステムのネックは膨大なデータ量の処理だ。走行中のGPSデータを、前述の精度でリアルタイムに保存しなければならないからだ。数百台単位で始めたテスト期間では、さまざまなベンダがこのシステムのためにDBMSを構築したが、あまりのデータ量に挫折したという。最終的にはテラデータのDBMSで実用に成功し、現在は数千台〜数万台単位での実用に耐え得るシステムを構築した。成功の要因はDBとDWHの切り離しや、分散化にあったという。
日本でも走行距離に応じて、ある程度保険料が変わる保険会社はあるようだが、Norwich Unionほどではないだろう。Norwich Unionは日本での展開はまだ考えていないそうだが、日本はカーナビ搭載率が非常に高いのでこれを応用したビジネスモデルは十分考えられると思う。日本でもこのような会社が現れれば、毎回心の底から納得して自動車保険料を払えるのだが……。
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