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安いだけじゃない、Eee PCが示す次世代PCの姿

2008/01/15

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 台湾ASUSTeK Computer(ASUS)製のA5ノートPC「Eee PC」の国内販売が始まった。出荷は1月25日。4万9800円という低価格が注目されるEee PCだが、安さだけではなく、PCの次世代を指し示す製品ではないだろうか。

 次世代を感じさせる点の1つ目はSSD(ソリッド・ステート・ディスク)の標準採用。従来のハードディスクドライブと比較して高速アクセスが可能で、低消費電力、小型化も可能。衝撃にも強い。ノートPC向けストレージの潮流は明らかにSSDに向いている。2007年12月には東芝が128GBのSSDを発表、2008年1月にはサムスンが同様に128GBのSSDを発表するなど製品開発が続いている。HDDと比べて高い価格が本格普及のネックになっていたが、大容量化が進めば大手PCベンダの採用も増え、調達コストも下がる。Eee PCは4GB、もしくは8GBと小容量ながらSSDを採用し、OSを格納している。レビュー(ITmedia記事)によるとOSの起動、アプリケーションの起動とも高速という。SSDの採用はユーザーにとっては(価格を除けば)デメリットはないのだ。

 次世代の2つ目はLinuxの採用だ。国内販売モデルはWindows XP Home Edition(SP2)を搭載しているが、海外モデルはLinux(eeeXubuntu、Ubuntu Linuxのデスクトップ環境をXfceに置き換えたXubuntuをベースに、Eee PC用にカスタマイズしたOS)を採用。起動するとWebメールやWebブラウザ(Mozilla Firefox)、Skype、Googleドキュメント、Wikipediaなどのクライアントソフトウェア、Webサービスを利用するためのメニューが表示される。Firefoxを起動し、Webサービスを使っている限りはWindows XPと操作感の違いはないだろう。Webブラウザで利用するWebアプリケーションやWebサービスの利便性が高まったことで、OSに依存するローカルのクライアントアプリケーションを利用する機会は少なくなった。つまり、Webブラウザが起動し、インターネットにアクセスできればどのようなOSでも問題はないという状況になりつつある。

 Eee PCはOSの存在感が薄くなる次世代を見越した製品だ。同じUbuntuの派生ディストリビューションとしては、GoogleのWebサービスにアクセスしやすいようカスタマイズした「gOS」もある。Eee PCがLinuxを採用したのはコストを抑えるためかもしれない。しかし、時代はLinuxベースのPCが存在可能な状況になっている。

 3つ目の次世代はサイズ、重さである。上記のようにWebサービスの利用が広まることで、いつでも、どこでもインターネットに接続するのが一般的になった。家庭内やオフィス内だけでなく、外出先などでもだ。このような環境を実現するには無線LANなどのネットワーク機能に加えて、物理的に持ち運び可能でないといけない。つまり軽量であることが条件になる。Eee PCはA5サイズで、重さが0.92キロ。存在を感じさせないということはないが、持ち運びを妨げるほどの重さではない。

 画面の狭さやバッテリ駆動時間など改善を期待したい点はたくさんあるが、Eee PCがPC市場に与える影響は大きい。国内のPCベンダも含めてEee PCが指し示す次世代PCの姿を無視して、製品開発は行えないのではないだろうか。

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(@IT 垣内郁栄)

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