[コラム:Spencer F. Katt]
著作権侵害防止法でアレも歌えなくなる!?
2002/10/12
吾輩にはどうしても理解できないのだけど、マイクロソフトがリキッド・オーディオの一連の特許をたった700万ドルで買い取ったことに、どうしてメディアの注目が集まらないのだろう?
いまエンターテイメント産業は、音楽や映画、その他のコンテンツからWeb上で収益を上げるためのソリューションを死に物狂いで捜し求めている。デジタル著作権管理と安全なデジタルメディア配信に関するリキッド・オーディオの特許が、信じられないような低い金額でレドモンドの手に落ちたのだ。ビッグニュースでないはずがない。
いまのところ、ハリウッドや音楽業界は、コンテンツのデジタル配信で利益を生み出すことに成功していない。もしマイクロソフトがデジタル配信の標準を確立できれば、有力メディアはなだれを打って同社のもとへ走るはずだ。
もちろん貪欲なレコード会社やハリウッドのエグゼクティブたちに、デジタル配信がちゃんとミルクを搾り取れる牛だということを説得するのには、多少時間がかかるだろう。しかし、先週明らかになった特許の譲渡契約は、搾乳に必要なバケツを提供しようとするマイクロソフトの断固たる決意を示している。
それにしても、デジタルパズルを自分たちの手で完成させることができないハリウッドの無能さを表しているのが、フリッツ・ホーリングス上院議員の「コンシューマ・ブロードバンドおよびデジタルテレビジョン・プロモーション法」に対するサポートだろうね。
同法案が議会を通過すれば、すべてのデジタルデバイスが著作権侵害防止機構をビルトインしなければならなくなる。これに対しては、各方面で激しい批判の嵐が巻き起こった。
この法案はプリンストン大学のエド・フェルトン教授にも、ある種のひらめきをもたらしたようだな。同教授のWebサイトには、法案が通過した場合、著作権保護機構が必要になるデジタルデバイスのリストが掲載されている。
そのリストだけど、よく見ると「ミュージカルチェア」(用を足したら音楽が鳴るおまる)や「ビッグマウス・ビリー・バス」(歌ったり、踊ったりするトロフィー・フィッシュ型のおもちゃ)なんかも含まれていて、なかなか笑わせてくれる。どちらも法案が通過すると、違法なデジタルデバイスになってしまうらしい。
それはさておき、ある情報筋が吾輩に知らせてくれたところによると、ウエストバージニア州とオハイオ州のAOLおよびコンピュサーブの一部ユーザーは先月、電話会社の悪夢のような請求書を見て卒倒しそうになったそうだ。なにしろ請求額がいつもの10ドル前後から、いきなり数千ドルに跳ね上がったのだから……。
原因は、いつもアクセスに利用している電話番号が、どういうわけか市内通話から長距離通話に切り替わっていたからだ。なんの説明もないまま長距離電話をかけ続けたユーザーには、1200ドルから5000ドルもの請求書が届いたという。
ウエストバージニア州の司法当局はいま、混乱の原因はISPか電話会社のどっちかだ、というユーザーからの苦情処理にてんてこ舞いらしい。
*魚の剥製を板状の台に打ち付けた飾り物のことを「トロフィー・フィッシュ」という。魚拓の欧米版といったところか。
*「ビッグ・マウス・ビリー・バス(Big Mouth Billy Bass)」とは、バスのトロフィー・フィッシュが首を持ち上げ、尾ひれを打ち鳴らしながら歌を歌う、アメリカで大ヒットしたおもちゃである。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週末更新予定です
[英文記事]
Anti-Piracy Bill
Might Silence Singing Fish
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