[コラム:Spencer F. Katt]
基調講演でも人が集まらなかったN+I
2003/5/13
ラスベガスのマッカラン空港でベルトコンベアから自分のバッグをピックアップすると、吾輩は意を決して悪名高いタクシー乗り場へ向かった。が、驚いたことに、長い行列に並ぶこともなく、すんなり乗車できたのだ。タクシーは法外な料金を請求することもなく、隣室の音がすべて筒抜けの紙のように薄い壁でできた、派手な見栄えだけがとりえのハードロック・ホテルまで、吾輩を超特急で運んでくれた。
それにしても、あまりの来場者の少なさは、吾輩に往年のにぎわいを思い出させてくれた。当時、技術系のメディアはN+Iの取材のために、「イラクの自由」作戦に従軍した記者の数よりも多くのレポーターをラスベガスに派遣したものだった。ところがベンダの中には、来場者が少ないのはツーリストが減っただけで、むしろ客層は有望なバイヤーに絞られたと喜ぶ声さえあった。彼らはバクダッド駐留の指揮官より楽観的だな。
出展企業の担当者は、「今年の来場者は有料プログラムへの参加も積極的だ」と話していた。確かにそれは客層が絞り込まれたことを裏付けている。しかし一方で、主催者側は基調講演が行われるホールの座席数を半分にした。それでもシスコのジョン・チェンバースの講演では空席が目立ち、空いたスペースでランバダ・コンテストでもできそうな状況だった。
しかし、チェンバースがエスコートも付けずにプレス・エリアまでやって来て、記者たちに何か自分に答えられる質問はないか、と愛想を振りまいていたのには、吾輩も少なからずショックを受けたね。5年前のCOMDEXの基調講演のときは、この神聖なスーパースターCEOに質問をしようとバックステージに忍び込んだ『eWEEK』の記者が、シスコの広報スタッフに羽交い絞めにされ、床にねじ伏せられていたものだが……。
その夜、ブラックジャックのテーブルでネバダ州の経済発展に貢献していた吾輩は、ある情報屋から「BMCがアイデンティファイ・ソフトウェアからブラックボックス技術のライセンス供与を受けて、ヘルプデスク・ソフトのRemedyに組み込むことを検討しているらしいね」と耳打ちされた。ただし情報屋は、BMCが単にInsight IPと何かをスワップしたいだけなのか、それともツナ缶を丸ごと買い取りたいのかは分からないと話した。
翌日の朝、二日酔いの吾輩は、Linuxカーネル2.5の開発動向をチェックするために、オレゴン州ビーバートンへ向かう便に飛び乗った。ブラディ・マリーを数杯飲み干したころ、吾輩はふと「オレゴン・トレール」という古いパソコンゲームを思い出し、飛行機の窓から外を眺めた。そこに熱病で倒れた犠牲者の数と急流に流された幌馬車の数が表示されていなくて、少しホッとした。
ビーバートンでは、IBMのLinuxテクノロジセンターの関係者が、現在取り組んでいる課題について話してくれた。その人によると、いま最大の課題というのは、プログラマたちが自分の記述したコードが必ずしもLinux開発カーネルに反映されるとは限らないことを知ったとき、彼らの士気をどのように維持し、どのように報いるかということらしい。
プログラマもコラムニストと同じように気難しい人々なんだねぇ。吾輩も自分の書いた原稿を編集者に勝手にカットされるのは大嫌いだ。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です
[英文記事]
To Vegas and Beyond
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