[コラム:Spencer F. Katt]
シカゴのビリーとレドモンドのビリー
2003/6/3
“Chicago, Chicago that toddlin' town……”と調子はずれの鼻歌を歌いながら、吾輩は先週、シカゴへ向かった。「インフォメーション・ビルダー・サミット・ユーザー・カンファレンス」を取材するためだ。
今回、吾輩の主たる目的は、ハイアット・リージェンシーで“インフォエリート”に会ってあいさつをすることだった。が、ついでだからケーブルテレビ関連のカンファレンスが開かれている会場をうろつき、テレビ局の重役をつかまえて、吾輩の長年の夢である本コラムのテレビ番組化をもちかけた。もちろん、体よく断られたが……。
肩を落としてサミット会場に引き上げた吾輩ではあるが、そこで飛び出したインフォメーション・ビルダー社長兼CEOのジェラルド・コーエンのフロイト的失言には爆笑した。彼は基調講演で、自律的コンピューティングを説明しようとして、「外部からの刺激に対する肉体的な反応」と口をすべらせたのだ。そりゃ、「有機的な反応」の間違いだ。
それと、スペースシャトルに3回搭乗し、国際宇宙ステーション建設計画の任務も果たした元宇宙飛行士のウィリアム・シェパード大佐が、どういうわけかアラン・シェパード(初めて宇宙空間に出た米国の宇宙飛行士)と紹介されたのにも面食らったね。
それはさておき、今回のシカゴ遠征で最もROI(投資回収率)が高かったのは、お気に入りの居酒屋「山羊のビリー亭」(Billy Goat's Tavern注1)でひと息できたことだ。そこは吾輩が、いまは亡き往年の名コラムニスト、マイク・ロイコとコメディアンのジョン・ベルーシの魂に出会った店なのである。ビル・ゲイツの独演会でお祭り騒ぎだったレドモンドなんかより、ずっと居心地のいい場所だ。
その「マイクロソフトCEOサミット」では、時代遅れの招待状を受け取った報道陣とともに、吾輩も“メディア・ビューイング・ルーム”と呼ばれる隔離部屋に押し込められた。そこから会場をモニターしていると、まるで映画『プロポーズ(THE BACHELOR)』注2の企業バージョンを観ているような気分だったね。
聞くところによると、ビル・ゲイツはサミットに出席したCEO全員に、NECの新しいタブレットPC「Versa LitePad」をプレゼントしたそうだ。そのPCには、カンファレンスの情報へアクセスしたり、ほかのCEOたちとコラボレートできるソフトがロードされていたらしい。ゲイツの話に聞き飽きたら、インスタント・メッセージングで時間をつぶすこともできただろう。
ギフトといえば、コマースクエストが企業にリスク管理サービスを売り込むために用意した販促パッケージは、とんでもない代物だな。同社は、ポスト・エンロン時代における不正経理の危険性を強調しながら、HBOの刑務所ドラマ『Oz』のDVDを送りつけてきたのだ。パッケージには鉄格子の描かれた鏡が同梱されていて、そこには“こうならないために”というキャプションが書き込まれていた。
時間がないなら悪いことをしようなんて思わないことだ、とサミー・デイビスJr.のモノマネをしたものの、あまりにも不出来だったために、すっかり現実に引き戻された吾輩は、「いつ来てもいい街だな、ここは」と独り言をいいながら、山羊のビリー亭の支払いを済ませたのであった。
注1:BillyはWilliamの愛称。goatには山羊のほかに「ばか者」という意味もある。ちなみに、マイクロソフトのソフトウェア設計最高責任者、Bill
Gates氏の本名はWilliam H. Gates III(ウイリアム・ヘンリー・ゲイツ3世)。
注2:『プロポーズ(THE BACHELOR)』:1999年のアメリカ映画。バスター・キートンのサイレント・ムービー「Seven
Chances」(1925年)のリメイク。主人公が、金目当ての女性たちににひたすら追いまわされる。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です
[英文記事]
Grazing in Chi-Town
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