[コラム:Spencer F. Katt]
独法はミュンヘンのLinuxに自由をもたらすか?

2003/6/10


 マイクロソフトのレドモンド・キャンパスの警備員に敷地から追い払われようとした吾輩は、ビルディング34の壁にしがみつき、ドイツ人のふりをしてこう叫んだ。「イッヒ・ビン・アイン・ペンギン!(Ich bin ein Penguiner)」

 しかし、吾輩のちょっとしたジョークは、予想以上にレドモンドの人々を怒らせてしまったかもしれない。なにしろ最近、ミュンヘン市のマイスターたちは3000万ユーロを投じて、WindowsからLinuxへ移行する計画を発表したばかりだからね。

 インターステート・ハイウェイをヒッチハイクしているとき、吾輩の携帯電話が鳴った。いつもの口の軽い情報屋からだった。そいつの話によると、ニュルンベルクのSuSEでは、Linux訴訟に浮かれているSCOに反撃すべく、ドイツ国内で同社を相手取って訴訟が起こせないか、バイエルンの弁護士たちに命じて徹底的に調査しているらしい。複雑怪奇なドイツ国内法に照らせば、SCOが同国のLinux会社に強要している不当な競争に対して、法的手段に訴えることができるはずだというのだ。

 もっともSuSEの幹部は、SCOのように実際に訴訟を起こすことにあまり乗り気ではない。しかし、ドイツのLinux系圧力団体であるLinuxTagが、すでにSCOを相手取って訴訟を起こしており、SuSEでも成り行きを注目しているという。LinuxTagでは、裁判所の仮処分命令を待つ一方、SCOに対して今月末までに、同社のUNIXに関する主張の正当性を証明するよう求めているそうだ。

 同乗させてもらった車はどんどんスピードアップしていったが、吾輩は飛行機の時間に間に合うかが心配だった。実際、人生で大切なのはタイミングだな、と吾輩は心の中でつぶやいた。IBMとロータスが最近行ったデスクレス・ワーカー向けの「ワークプレース・メッセージング」製品の発表を思い出しながら……。

 IBM/ロータスの製品は、その直前にセンドメールがHPやインテルとともに発表した「ワークフォース・メール」製品とそっくりだ。吾輩の友人によると、センドメールとロータスは1年前、同様の製品の共同開発で提携したそうだ。ところが残念なことに、WebSphereがらみのソリューションに力を入れるIBMの横やりで、両社の提携関係は頓挫したらしい。まぁ、最後に笑ったのは、IBMとロータスを1週間のわずかな差で出し抜いたセンドメールかもしれないね。

 吾輩を乗せた車は、なんとか出発時間までに空港に到着した。それにしても今回、ドライバーが吾輩を運んでくれただけでなく、ゴシップまで提供してくれたのは、まさに望外の喜びだった。彼によると、米国最大の家電小売業者が独自のノートブック製品を開発するというアイデアに、大手PCメーカー各社はかなり危機感を抱いたようだという。お抱え運転手の話では、小売大手のベスト・バイが自社ブランドのポータブルPC開発計画を断念したのは、PC業界から大きな圧力があったからだそうだ。

 搭乗ゲートに急ぐ吾輩の背中に、おしゃべりなドライバーは別れの言葉を投げてきた。「今度会ったときは一杯おごってくれよ」。吾輩はゲートに滑り込みながら、振り返ってこう答えた。「友よ、吾輩が貴君のために何ができるかではなく、貴君が吾輩のために何ができるかを問い給え」

(編集局注)ジョン・F・ケネディの有名な演説を覚えているだろうか。
「Ask not what your country can do for you. Ask what you can do for your country.」
(「あなたの国が、あなたの為に何ができるか」を問うのではなく「あなたが、あなたの国の為に何ができるか」を問い給え)

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Schadenfreude in Seattle Laws may liberate Munich's Linux.

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