[コラム:Spencer F. Katt]
シーベルが州知事選出馬を断念した理由

2003/9/9


 タイムズ・スクウェアにあるスポーツカフェ「ESPNゾーン」のフリースロー・ゲームで、1時間と60ドルも費やし、吾輩はようやく1バスケットのスコアを獲得した。その後、12、3歳の少年たちの嘲笑(ちょうしょう)を背に受けながらフライドポテトの包みをカバンの中に放り込み、DCIのCRMカンファレンスと併設展示会を取材するため、吾輩はジャビッツセンターへ急いだ。

 が、会場に人影はまばらだった。閑散としたホールは、CRMベンダが市場で苦戦していることを如実に示していた。もはや十分に縮小された展示フロアの、ほとんど半分近くを占めていたマイクロソフトも、きっと場違いな雰囲気に戸惑ったに違いない。レドモンドの出展がなければ、ホテルの宴会場を借りるだけで十分だっただろうね。刺激的なブース・エンターテイメントがないエキスポほど退屈なものはないけど、エグザクトとユニコの2社がそれぞれのブースで時代遅れのトランプ手品をやっていたのが唯一の救いだった。

 吾輩は寂れた光景を眺めながら、ここにダライ・ラマが現れて、CRMソフトの誘惑に騙(だま)されないよう来場者にアドバイスしてくれたら面白かったのに、と半ば本気で考えた。

 というのも、ダライ・ラマをネタにした広告キャンペーンで自由チベット運動のコミュニティを激怒させたセールスフォース・ドットコムのゴシップを別にすれば、会場で耳にした面白い話は、同社のCRMモデルがあまりにも成功したために、アップショットやネットレッジャー、セールスネットなどが大手ベンダの格好の買収ターゲットになっているというものだけだったからだ。ある情報屋によると、どうやらオラクルがネットレッジャーを買収しそうだという。同社は、すでに名称の変更まで検討しており、ラリー・エリソンも投資グループに名を連ねているとか。

 それはさておき、その日の夕刻。グルメを自認する吾輩は、いま最高にヒップな「ブルー・スモーク・レストラン」でホットなリブステーキとクールなジャズを楽しんでいた。すると、生粋のニューヨーカーでパートタイムの占星術師でもある友人が、最近出回っている8月14日の米北東部の大停電を撮影した衛星写真のメールはニセモノだよ、と教えてくれた。その画像を撮影したという「GeoStar」なんて名前の衛星は存在しないそうだ。

 また、肉片のへばりついた骨を意地汚くかじっていると、別の友人がテーブルの上に慎重にナプキンを広げ、Vignetteがアーティシアを買収して、コンテンツ管理分野の統合化を目指している背景を詳しく説明してくれた。Vignetteには、競合他社のほとんどがすでに持っているデジタル資産管理ソリューションが欠けているという。そしてアーティシアは、現存する最後のデジタル資産管理専業ベンダなのだそうだ。

 一方、吾輩がトイレで用を足していると、仕切りをはさんで隣に立った情報屋がこっそり耳打ちしてきた。話の内容は、シーベル・システムズのCEO、トム・シーベルが、カリフォルニア州知事リコール選挙への出馬を断念した理由だ。その情報屋によると、選挙の投票日である10月7日が、ちょうどサンディエゴで開催されるシーベルのユーザー・カンファレンスのオープニングと重なり、それが出馬を断念した理由だという。

 本当かな。それより、どう考えても勝ち目のないシーベルは、カンファレンスの初日に、ゲーリー・コールマン(アーノルド坊や)に対して敗北宣言を出したくなかっただけじゃないの?

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Siebel won't run--for governor, that is.

Copyright(c) eWEEK USA 2002, All rights reserved.

Spencer F. Katt バックナンバー

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)