[コラム:Spencer F. Katt]
インテル・ノット・インサイド

2003/10/28


 ラップトップのスピーカーからジェリー・ベイルの“Do you know the way to San Jose?”が流れていた。吾輩は「マイクロプロセッサ・フォーラム」へ向かう前に、フェアモント・サンノゼ・ホテルの部屋で電子メールをチェックした。どうでもいいけど、ナイジェリア419詐欺メール団にはいい健康保険組合が必要だな。この1週間、吾輩が受け取った詐欺メールのほとんどは、余命3カ月の「ドバイの商人」からのものだ。

 会場に入ると、今年はなんとなくいつもと状況が違っていた。マイクロプロセッサ・フォーラムは、吾輩が記憶する限り初めて、はっきり脱インテルの傾向を示していたのだ。

 「インテルは招待されたが、今回参加しなかった。しかし、彼らはインテル・デベロッパ・フォーラムでさえチップについてひと言もしゃべらなかったのに、ここでいったい何を話してくれるというんだい?」と、モーニング・セッションの司会者で、「Microprocessor Report」のシニア・エディター、ケビン・クレウェルは笑った。

 クレウェルはまだ好意的な方だった。何人かの参加者は、インテルのPentium 4 EEを“エマージェンシー・エディション”だと揶揄(やゆ)していた。というのもこのチップ、AMD Athlon 64 FX-51のパフォーマンスに慌てたインテルが緊急対策的にでっち上げた製品だと考えられているからだ。

 吾輩はメイン会場の鉢植えのシダの茂みに身を隠し、AMD陣営と思しきグループがささやき合うウワサ話に耳をそばだてた。彼らの話によると、P4 EEチップを目にするのはおそらく一部の人々だけで、実際に製品に組み込まれる可能性はほとんどなく、あったとしても大した数量にはならないという。

 「少なくともわれわれは、ユーザーが実際に購入できる製品を売っているけどね」と、下卑(げび)た笑いを漏らしたのは、AMDの販売担当者のようだ。いやはや、吾輩がいないとき、人々は吾輩のことをどんなふうに論評するのだろう……?

 AMDのCTOで副社長のフレッド・ウェーバーは基調講演の中で、プロセッサ命令セットの収斂(しゅうれん)度を欧州の共通通貨にたとえ、さまざまなチップ・ファミリーごとにソフトウェアを移植するコストは、不経済以外のなにものでもないと述べた。そして、多くの人々が予測していたように、彼の話題は通貨の問題から迷走し始め、いつしかインテルの64ビット命令セットと比較して、AMDの64ビット拡張x86命令セットがいかに優れたものであるかを唱えるマントラへと変わっていった。

 ウェーバーの次に壇上に現れたのは、英国に本社を置くARMの副社長、ジョン・レイフィールドだった。同社のプロセッサはx86互換ではない。レイフィールドはウェーバーの通貨を用いた比喩(ひゆ)を賞賛し、こう付け加えた。「ちなみに英国でも、ユーロなんか使っちゃいません」

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Intel Not Inside

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