[コラム:Spencer F. Katt]
ベル系VoIPは単なるビジー・シグナル?

2003/12/16


 コミュニケーションこそが拡大を続けるグローバル・ビレッジのカナメであることは、疑うべくもない。そしてVoIPやWi-Fi、あるいは糸電話といった通信技術に人々の注目が集まろうとも、吾輩はCoAP(Chat over Alcohol Protocol))より有効な手段は他にないと確信している。

 サンフランシスコで旧知の情報屋とマティーニを飲んでいたら、彼の口が次第に緩んできた。情報屋の話によると、HPのLinux担当役員たちは、SCOグループの訴訟攻撃から保護する対象を自社のユーザー以外に拡大する方向で検討しているらしい。HPはすでに一定の条件を満たせば、同社の法務部門スタッフが対応するなど、顧客保護を前面に打ち出している。

 もしベイエリアの巨人が非HPユーザーのガーディアン・エンジェルになる決意を固めたとすれば、それは民事訴訟の被告にHP製品への乗り換えを促すための戦略以外考えられない、と情報屋は主張する。どこかで聞いたような話だな。と思ったら、子どものころ近所の悪ガキが、街中をうろつくどう猛な犬から守ってやるからランチ代をよこせ、と吾輩にいい寄ってきたことを思い出した……。

 オリーブを口の中に放り込むと、吾輩はタクシーを呼び止め、サンフランシスコ空港へ急いだ。夜行便でワシントンD.C.に飛び、チャールズ・シュワブ・テレコム・サミットを取材するためだ。

 次の日、フェアモントホテルのバーで吾輩は携帯電話を脇へ追いやり、ジャック・ダニエルのグラスを傾けながら、おしゃべりなネクステルのオペレーターと話し込んだ。彼の話では、携帯電話事業のパイオニアであるクレイグ・マッコーとネクステル創立者のモーガン・オブライエンが最近同社から離脱したことが、ネクステルの身売り話や他社との合併といったウワサの火種に油を注ぐことになったという。

 しかし、多くの通信キャリアが携帯電話市場へ本格参入する中、ネクステルの優位性は徐々に失われつつある。加えて、ネクステルの周波数帯ポートフォリオは依然として理想にほど遠く、しばしば合併先と目されるMCIもいまだ倒産の危機に直面している、とオペレーターは指摘する。この先しばらくは曲折がありそうだな。

 電話交換業務に精通した吾輩の友人によると、ボストンのローカル電話会社ベライゾンは、VoIP計画をセカンド・ラインのサービスとして位置づけており、すべての通信を新技術に移行するわけではないという。ベライゾンは将来の収益源を求め、ファイバー・ツー・ザ・カーブやファイバー・ツー・ザ・ホーム、ワイヤレス・オプションの実験サービスを近く開始する計画だ。

 このテレコム情報筋によると、業界ウォッチャーには、ベル系電話会社がVoIPに本気で取り組む姿勢があるか疑問視する声が少なくないという。従来型の音声サービスと客を奪い合うことになると考えれば、ベル系のVoIPは規制当局とユーザーを待たせるだけのビジー・シグナルに終わるかもしれない、という穿(うが)った見方もあるらしい。

 一方、マイクロソフト・ウォッチャーと約束していた時間になんとか帰宅できた吾輩は、ミモザ・カクテルを飲みながら、彼が入手した最新情報を聞いた。それによると、レドモンドはCOMDEXで公開したビルとスティーブの「マトリクス」パロディ・ビデオを掲載したWebサイトに対して、掲載中止を求めているという。理由? ストロボ映像をゲイツのスピーチの最初の1分間に制限した“ルール”を破っているからだとか。それくらいのこと、アメリカ映画協会のジャック・バレンティ会長でも、許してくれると思うけどね……。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Loose Lips Spill Tips

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