[コラム:Spencer F. Katt]
クリスマスは企業にとってもショッピングの時?

2003/12/23


 「レッツ・ゴー・ショッピング!」。この時期になると、ウォルマートの売り場でもみくちゃになりながらDVDプレーヤーを買う人も、株価の低迷に苦しむ競合会社をひそかに狙うハイテク企業も、みんな年末恒例の大合唱だ。どこがどこの買収を目論んでいるか、吾輩は最新情報を探るために、先週から“技術系企業ホリデーパーティ・ホッピング・モード”に突入した……。

 最初のパーティ会場は、サンフランシスコ・ベイエリアだった。バー・カウンターでくすねたペパーミント・シュナップスのボトルを片手に、ビュッフェ会場に向かっていた吾輩は、途中、ちょっと魅力的な若い女性が同僚とおぼしき連中に、「アプリケーション・セキュリティ会社のサンクタムが身売り先を探しているらしいわよ」と話しているのを耳にした。なんでも、とある投資銀行に依頼して、同社の買収に興味のある企業を探しているのだとか。しかし、状況はかんばしくないそうだ。少し前、マイクロソフトが同社に興味を持っているというウワサを聞いたことはあるけど。

 吾輩はそこを適当に切り上げ、ドアを出てタクシーに乗り、次のパーティ会場へ向かった。そのパーティでラフな格好をしたプログラマの1人から、マーキュリー・インタラクティブとクエスト・ソフトウェアがマネジメント・ソフトウェア分野で買収戦略に乗り出す構えだという話を聞いた。IBMも同様の動きを見せているという。また別の招待客は、以前から身売りの方向で動いているペレグリンについて、財務内容が改善したら買い手がつくだろうと話していた。一方、文学少女のようなチャーミングな女性の話によると、ネットワーク・アソシエイツがマジック・サービス・デスク事業部門の売却を検討している模様だ。

 「しかし、なんですな、もしIBMがペレグリンを買収したりなんかしたら、あの会社のインストール・ベースはますます磐石(ばんじゃく)になりますねぇ」などと言いながら、若い女性に近づこうとした吾輩は、誤ってテーブルの上にあったCDプレーヤーを床に叩き落としてしまった。ブレンダ・リーの美声と吾輩の野望は、突然の静寂の中で途切れた。

 次のフライトで吾輩は東海岸に舞い戻った。今度のパーティ会場は、ボストンのコプレー・プレースだ。ここでもペパーミント・シュナップスのボトルを何本か空けたあと、吾輩はブラウン・キャンディ・ケーンをなめながら、管理職づらした初老の紳士の話に聞き耳を立てた。その紳士によると、HPがどうやらシステムおよびセキュリティ管理プロバイダのネットIQを狙っているらしい。また、ある若い男性の話では、仮想インフラ・ソリューションを提供するホットサーバ・プロバイダのVMウェアに、かなりの数のベンダが熱い視線を注いでいるそうだ。若者は、「聞いたところによると、EMCがいちばん熱心らしいですね」と付け加えた(日本では12月17日に「EMC、VMware買収」と発表された)。

 吾輩は、「前々からIBMがどこかのオンライン・ミーティング/コラボレーション製品を買収して、Lotus Workplaceの機能を拡張すれば面白いと考えてましてね。インターワイズなんかいいかもしれません。なにしろジム・マンジ会長は、IBMに飲み込まれることに慣れっこだし……。がはは」と馬鹿笑いしながら、興味深い色をしたキャンディ・ケーンをさらに何本かポケットに押し込んだ。

 どうやら吾輩を酩酊(めいてい)状態に陥れたのは、シュナップスではなく、キャンディ・ケーンだったようだ。足元をふらつかせながら表に出ると、道の向こうにボストン警察のパトカーが止まっていた。誰もいなかったので、吾輩はパトカーのマイクをつかみ、「みなさん、キャンディ・ケーンのなめすぎに注意しましょう!」と大声で叫んだあと、ダッシュで夜の闇へと消えたのであった。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
'Tis the Season to Go Shopping

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