[コラム:Spencer F. Katt]
もう1度直してくれよ、トニー

2004/8/10


 「なんだ、タダの水か」。マイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマーがテレカンファレンスで株主への高額配当を発表しているとき、吾輩はカンファレンスルームの外にあった冷水器の前で肩を落とした。CEOの発表に耳をそばだてながら、吾輩はもう1つのウワサを検証したのだ。それは、マイクロソフトでは従業員ののどを潤す無料の炭酸飲料水が缶ではなく、ソーダ・ファウンテンで供給されているというものだった。吾輩の確かな味覚でチェックしたところ、それは単なる都市伝説にすぎなかった……。

 マイクロソフトのキャンパスは、ロッカールームの無料タオルサービスが打ち切られて以来、フリーで提供されるものが次々になくなっていくという不安に包まれていた。今回の320億ドルに上る株主への配当は、そうしたケチケチ化の理由を明確に示しており、いずれ無料の炭酸飲料水も冗費削減に目を光らせる経理部門の餌食になるのでは、とヒステリックな憶測を呼んでいた。

 Ziff Davisがオフィスにある金メッキのシャンパン・ファウンテンを撤去しないことを望みながら、吾輩はレンタカーでシータック(シアトル・タコマ国際空港)へ急ぎ、バートン・グループの「Catalyst」カンファレンスを取材するためにサンディエゴへ飛んだ。

 ここ数年、吾輩は単純な理由から、オタク系の集会に出席することはなかった。というのも、1990年代の中ごろ、コロラドで開催されたカンファレンスで、2人のオタクがディレクトリ構造をめぐって、細く長くか、太く短くかで激しく論争し、その記憶がその後の数年間、吾輩の情緒的、知的発達を著しく阻害したからだ。今回のサンディエゴでも、ベンダの陳腐なプレゼンテーションにはいささか失望させられた。あらゆるベンダと協調したい、とマイクロソフトは手を広げた。自社製品に限定せず、常に最良の技術を推奨したい、とIBMは胸を張った。そして、経営トップの混乱が製品開発に影響を及ぼすことはない、とコンピュータ・アソシエイツは弁明した。やれやれ、だ。その日の夜、吾輩はカラオケでストレスを発散するためにクロースの店へ向かった。

 吾輩ほど性格がひねくれていると、何かに幻滅を感じることはあまりない。が、レッドハットの過去3年にさかのぼる決算の修正発表には、なんとなく現実逃避したい気分になった。高潔なレッドハットのイメージは粉々に砕け、吾輩の脳裏にはあの忌まわしいエンロンの悪夢がフラッシュバックした。

 気分転換になにか面白いことはないかと検索していると、BlackBerryは決して期待を裏切らないね。モスコーニ・センターで開催された「JavaOne」関連のニュースで、Javaジャンキーたちがまた笑わせてくれた。同カンファレンスでは、サンがまもなくBMWに搭載される最新の車載エレクトロニクス技術を発表したそうだ。一方、マイクロソフトは、欧州自動車市場向けのテレマティクス・システムをフィアットと共同開発することを明らかにしたという。究極のドライビングマシン(BMW)はJavaを選択し、マイクロソフトは、“Fix It Again, Tony(もう1度直してくれよ、トニー)”を選択したというわけだ。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Drinking Microsoft Kool-Aid

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