[コラム:Spencer
F. Katt]
月5万ドルの基本給なら……
2004/9/7
いくつかのベンダ・ミーティングを取材するためニューヨークにやってきた吾輩は、ホテルの部屋のテーブルに置かれたミニバーの鍵を前に、しばらく考え込んだ。経理部のしまり屋たちは、オリンピックの表彰台に上ったアスリートが金メダルをかむように、5セント玉を1枚1枚噛みながら経費節減に努めている。悲しいかな、吾輩の旅費・交際費予算では、1袋5ドルのスモーク・アーモンドと1杯7ドルのタンカレーを楽しむことすら許されないのだ。冷蔵庫の前で立ちすくむ吾輩の呪縛を解いたのは、携帯電話の着メロに設定していたビートルズの名曲「You Never Give Me Your Money」だった……。
電話をかけてきた友人は、コンピュータ・アソシエイツが米証券取引委員会に提出した年次報告書を電子メールで送ったのでチェックしろという。「ほほう。暫定CEOのケン・クロンがもらう報酬は、月額5万ドルの基本給に制限付き株式5万2780株、さらに8万3845株の株式購入オプションか」と吾輩はうなった。「月5万ドルもらえるなら、仮設トイレに1カ月入っていろといわれても我慢するね」
友人によると、クロンは業績に応じて75万ドルのボーナスを受け取る権利があり、株価の水準に応じて最高225万ドルのボーナス(ストックオプションまたは制限付き株式)を得る可能性もあるという。一方、同社の年次報告書は、政府による調査が終了するまで、前CEOサンジェイ・クマーに対する退職慰労金の支払いを延期するとしている。もっとも彼には、退職にあたって“とりあえず”、自宅のセキュリティ・サービス、専用のオフィス、秘書1人、電話とネットワーク接続、本人と家族の今後20年間にわたる健康保険は保証されたけど。
電話を切った後、もはや吾輩にはミニバーの誘惑を拒絶することができなかった。小さな冷蔵庫は「2001年 宇宙の旅」のモノリスのごとく、部屋の中に屹立していた。パンドラの箱を開ければ、そこには冷たいクアーズ・ライトとグラノラ・バーがあるはずだ……。
吾輩の乏しい旅費・交際費予算を救ったのは、ドアをノックする音だった。部屋にやって来た友人は、EMCが以前発表した内容以上にiSCSI技術への傾斜を強め、ネットワーク・アプライアンス市場へ本格攻勢に乗り出す構えを見せている、と教えてくれた。
腹を空かした哀れな様子に同情したのか、友人は吾輩を食事に誘ってくれた。持つべきものは友達だ。ホテルの外に出たついでに、われわれはマジソン・スクエア・ガーデンに立ち寄り、共和党全国大会の様子もチェックすることにした。で、そこにいたゼロックスの保守要員から聞いた話だけど、共和党全国大会では民主党全国大会の2倍も多くプリンタ機器を導入しているらしい。政治家って、プリンタよりシュレッダーの方を多く利用する人々だと思っていたけど、違うんだな。
「そういえば」と、友人はもう1つの事実を教えてくれた。「民主党全国大会のオフィシャル無線サービスを提供していたのはネクステルだけど、この会社は共和党全国大会のオフィシャル・サプライヤでもある」。もしパット・ブキャナン(政治評論家、元大統領候補)がそれを聞いたら、きっと彼は、2つの政党間になんの違いもないことを確信するだろうね。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
Minibar Madness
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