[コラム:Spencer
F. Katt]
マディソン・スクエア・ガーデンの外はWiFi天国
2004/9/14
共和党全国大会が佳境に入る前に、吾輩はニューヨークを脱出することにした。セキュリティ上の理由から、大会組織委員会がマディソン・スクエア・ガーデン内にWiFiアクセスを敷設しなかったからだ。そんな閉鎖空間に、接続ジャンキーの吾輩がいなければならない理由は何もなかった。ところが会場の外に出ると、複数の活動家グループが抗議団体向けにあらゆるタイプのモバイルWiFiホットスポットをセッティングしていた。そのため吾輩はプラカードの横に座り込み、すぐさまオンラインに復帰することができた。
実際、ラップトップを携帯する身にとって、ネットワークに接続できない状態はかなり辛いものがある。ちなみにニューベリー・ネットワークスによると、ニューヨーク市内を車で2時間ドライブすれば、7000台以上の無線LANデバイスを検出することができ、そのうちの63パーセントはアクセスポイントだという。
吾輩にはもう1カ所行きたいところがあったので、うしろ髪を引かれる思いで無料のWiFi天国から離脱した。向かった先は、ミッドタウンに仮オープンした「ミャーオ・ミックス・カフェ」だ。ここでフィレ・ミャーオをオーダーし、空腹を満たしたあと、一路ボストンへと急いだ。
ボストンには、マサチューセッツ・ソフトウェア・カウンシルで講演するため、マイクロソフトのCEOスティーブ・バルマーが来ていた。大勢のインテリたちを前に、彼はマイクロソフトが検索技術分野のマーケットリーダーを目指し、“全力疾走”していることを強調した。ほとんど頭髪のないこの男は、これまでレドモンドが検索市場に対して“過少投資”だったことを認め、今後はマイクロソフトがグーグルやヤフーを叩きのめす過程を「ぜひお楽しみください」と大口を叩いた。さらに、慈悲深いこのビル・ゲイツの相棒は、ボストン市民の技術能力の向上に取り組む慈善団体「ザ・ティモシー・スミス・ネットワーク」に、総額40万ドル以上のマイクロソフト製品を寄贈することも明らかにした。
チャウダースープのボールに狙いを定めた吾輩に、セキュリティ専門家の友人が話しかけてきた。なんでもAOLのヌルソフト部門が、Winampメディア・プレーヤーの脆弱性を修正するパッチをリリースしたらしい。まぁ、ユーザーが自由にグラフィックスをカスタマイズできるスキニング機能など、XMLドキュメントを悪用するハッカーのスパイウェアやトロイの木馬にとっては、開け放たれたドアも同然だ。結局、音楽を安全に楽しみたいなら、ほこりをかぶったポータブル型のターンテーブルを引っ張り出して、いまもちゃんと音が出る45回転のレコード盤を回すのがベストだな。
ブレザーのポケットの中で携帯電話の着メロに設定していたビージーズの「I've Gotta Get a Message to You」が鳴ったのは、タクシーで自宅に向かっているときだった。電話をかけてきた友人によると、グーグルはGmail戦略の一環として、IMサービスに進出することも検討しているらしい。
ベッドに潜り込む前、吾輩はいつものように電子メールをチェックした。親しい仲間からのメールを読んでいると、マイクロソフトの“MOM 2005”というのは、1995年ごろに注目を集めたBob(注)の母親か、あるいは義理の母親に違いない、との指摘。うーん、吾輩はあの捨てられた可哀想なClippy(Officeアシスタント)のママかと思っていた……。
(注)日本語化されなかったマイクロソフトのマルチ画面表示のためのユーティリティ。7〜8年前に米国でリリースされたがいつのまにか市場から姿を消した。基本的な設計思想はWindows XPのマルチログイン機能に継承された。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
Wi-Fi Wanderlust
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