[コラム:Spencer F. Katt]
セキュリティの達人も……

2004/11/16


 「はい、こちらCSI、訴訟・ゴシップ担当……」。吾輩は受話器を取り、ぶっきらぼうに応えた。電話をかけてきた友人は、犯罪現場調査のエキスパートたちの活躍を描く人気テレビドラマ「CIS(Crime-Scene Investigation)」にすっかりハマっている吾輩に、その日最初のミステリーを投げかけてきた。お決まりの失踪事件だ。

 友人の話によると、ノベルの副会長職をさきごろ辞任したクリス・ストーンは、9月以降、まったく会社に姿を見せなかったという。いったい何があったのだろう? 路上のかすかな痕跡を探し出すように地道に調査を続けたところ、前副会長はハーバード・ビジネス・スクールの上級管理職トレーニングコースに参加していたことが判明した。どうやら社交能力を磨くための短期集中コースを履修していたもようだ。

 聞くところによると、ノベルが買収したジミアンやSuSEから合流した人々にストーンの管理スタイルがまったく受け入れられず、本人は相当悩んでいたらしい。ノベルの広報担当者は、スタッフとの軋轢がコース履修の背景にあるかどうかについてはコメントを避けたが、「どんな会社でも一般的に行われている上級職のトレーニングおよび能力開発の一環」だったとしている。

 失踪事件のファイルを閉じようとしたとき、インスタント・メッセージが飛び込んできた。それによると、さきごろバンクーバーで開催されたOOPSLA(オブジェクト指向プログラミング、システム、言語、アプリケーション)カンファレンスで、会場から参加者がごっそり消えてしまう事件が発生したという。

 吾輩は直ちにカナダ在住のオタク数人に聞き込み調査を行った。すると、どうやらマイクロソフトのトップ・リサーチャー、リック・ラシドによる「Software Factories」のデモがあまりにも商業主義的な内容であったため、カンファレンス参加者の一部が怒って会場から立ち去ったというのが真相のようだ。宇宙人に誘拐されたわけではなかった。

 それはさておき、吾輩は、コンピュータ・アソシエイツから次に離脱するエグゼクティブを心霊チャネリングで特定することはできないか、と心理作戦課に問い合わせた。しかし、サイキック部隊が霊界から得ることができたのは、CAの販売担当上級副社長、ゲーリー・クインが先週、11万株ものCA株を売り抜け、大金を手にしたらしいという情報だけだった。

 その夜、吾輩は夕食を共にした新米記者から、非公開企業の経営がうまくいっているかどうかを判断する演繹的な方法について質問された。「うむ。そうだな、例えばSASを例に考えてみよう」と吾輩。「ある筋から、このソフトウェアベンダーのCEO、ジム・グッドナイトが所有するノースカロライナ州カーリーのプレストンウッド・カントリー・クラブの拡張工事が無事に完了したという情報が入ったら、とりあえず彼の会社の財務状況は悪くないと判断できるね」

 最後に未解決のミステリーをもう1つ。「Exploiting Software:How to Break Code」の共著者であるグレッグ・ホグランドは自他共に認めるセキュリティの達人だが、セキュリティ関係者の間では、マルウェアが彼のパソコンから個人的な電子メール・メッセージを放出しているのではないか、とささやかれている。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Purr-Ponderance of Evidence

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