[コラム:Spencer F. Katt]
マイクロソフトの尻を蹴飛ばしすぎたら……

2004/3/23


 先週、ラスベガスで開催されたIBMのPartnerWorldで、吾輩をゲストスピーカーのロバート・レッドフォードと間違えた若い女性がいた。実はもっと親しくなりたかったのだけれど、あいにく彼女の連れていた盲導犬が吾輩を警戒して、それ以上近寄らせてくれなかった。いつもながら、そういうことにはアンラッキーなのであった。

 それにしても、IBMのボス、サム・パルミサーノのスピーチは、ハワード・スターン(訳注:下ネタで大人気のラジオDJ)の領域に近づいたのではないだろうか。「このThinkPadでひざを挟めば、ズボンのプレスも一発だ。それ以外のものもプレスしちゃうかもしれないが……」と口走って、彼は大笑いした。FCC(連邦通信委員会)はパルミサーノに罰金を課すべきだな。

 今回のコンファレンスの基本的なメッセージは、来るべきSMB(中堅・中小企業)市場をめぐるマイクロソフトとの戦いに、IBM側でも臨戦態勢が整ったことをアピールするものだった。実際、シウェル・コンサルティングをはじめとするIBMビジネスパートナー各社は、レドモンドとの大乱闘を待ち望んでいる。ギプスを巻いた足を引きずってステージに登場したシウェルの社長、ルイ・ジョンソンは、「マイクロソフトの尻を蹴飛ばしすぎたらこうなった」と、怪我した足を上げて会場を沸かせた。

 IBM研究員のロベルト・シッコニーがフォードのセダンで、「サリー」と呼ぶ音声エージェントと会話できるパーソナル・スピーチ・アシスタント技術をデモしたとき、あまりの出来の悪さに吾輩はヒヤヒヤした。昔の人気テレビドラマ「ナイトライダー」に登場する多弁なコンピュータカーと違って、サリーは注意欠陥・多動性障害に苦しんでいるように見えたね。さすがに見かねた研究ディレクターのポール・ホーンも、「サリーはまだ寝ぼけているみたいだな。きっと昨日の夜は遅くまで飲んでたんでしょう」と、冴えないジョークを飛ばすほどだった。

 ボストンへ戻る機中、吾輩の隣席に明るい緑色のスーツを着た赤い髭の小さな男が座った。さすがに吾輩も、この世の中に小妖精が存在するとは信じていないが……。離陸してすぐ、その人物はちょっとエキセントリックなITエグゼクティブであることが判明した。そして彼の話は、まさにゴシップの宝庫だった。

 その小柄なビジネスマンによると、オラクルはまもなく「コマーシャル・グリッド・コンソーシアム」を立ち上げ、商用グリッド・インフラストラクチャのAPIと機能を構成する標準規格の策定計画を明らかにするもようだ。グローバル・グリッド・フォーラム(GGF)などの標準化グループは、ラリー・エリソンに少なからぬ不信感を抱いている。が、すでにGGFのメンバーであるHPや、おそらくサンも、オラクルが提唱する新しいコンソーシアムに参加する方針を固めているという。オラクルの発表は4月後半に予定されているけど、気の短いオラクルのエグゼクティブが数週間以内に情報を漏らす可能性も……。

 翌朝、薄汚れた自分の部屋で目を覚ますと、吾輩の髭は明るい緑色に染まっていた。あの小柄な情報提供者と一杯やるためにタクシーに同乗したところまでは、かすかに記憶に残っている。不思議な気分でポケットの中を探ると、くしゃくしゃに丸められた紙が出てきた。サウスボストンのクワイアットマン・パブのナプキンだ。そこには、こう書かれてあった。

 「キャットさんへ。IBMとHPがペレグリン買収で競合中。HPのノバダイム買収発表を受けて、マリンバも買収される可能性あり。おそらく相手はBMC。Windows管理機能のネットIQも、BMCかHPに身売りするかも。以上、締め切りに間にあうとよろしいのですが……。これでもまだ小妖精を信じませんか?」

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Luck O' the Katt

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