[コラム:Spencer F. Katt]
堕落は発明の母

2004/7/27


 「人々に安らぎと平和の幻想をもたらすものは何だろう?」と吾輩はつぶやいた。ファイアウォール、テディ・ベア、それともチェーン・ロック? 吾輩の場合は、最近、DVDに収録された古い映画に癒(いや)されることが多い。だから先日も、1956年公開の「80日間世界一周」のDVDを入手しようとショップに向かった。ところが、何ということだ。DVDのパッケージに印刷された注意書きには、「このDVDはMacでは再生できません」などと書いてあるではないか。吾輩は震える手でパッケージを棚に戻し、「DVDのようなハードメディア娯楽商品は、どんなマシンでも再生可能であるべきじゃないのかね」と憤慨した。

 そういえば、このところネットの音楽サービスがフォーマットの壁を作るようになってきた。オンライン音楽ビジネスに新規参入したソニーも、自社のデバイスでしか再生できない曲をダウンロード販売し始めたし……。

 吾輩が将来のエンターテイメントの選択肢に不安を覚えていたとき、セキュリティ専門家の友人から電話があった。彼の話によると、最近マカフィー(旧ネットワークアソシエイツ)が断行したレイオフは、主に販売スタッフが対象になったという。同社は今回のレイオフについて、Sniffer製品ラインの売却に伴うものとしているが、組織再編の詳細は明らかにしていない。マカフィーはコーレルのベテラン、デビッド・ロバーツを北米販売網の責任者に任命すると発表したが、友人の解説によると、どうやら販売部門のてこ入れが目的らしい。レイオフで優秀なチャネル・マネージャが何人もいなくなったからだという。マカフィーからのメッセージは明白だな、と友人は続ける。業界で先月末からささやかれているウワサによると、同社は身売り先を探しており、どうやらマイクロソフトが買い手として名乗りを上げそうだというのだ。ただし、マカフィーの広報担当は、そうしたウワサはまったく根拠がない、と全面否定している。

 マイクロソフトといえば、同社のアーキテクチャ戦略チームのメンバーがTechEd Europeのイベント会場で披露した”Bye, Bye Mr. CIO-Guy...”のコーラスで始まる替え歌のビデオが、www.pathelland.comで公開されている。「アメリカン・パイ」のメロディーに乗せて唄う歌詞は、ニコラス・カーがハーバード・ビジネス・レビュー誌に寄稿した「IT Doesn't Matter(もはやITに戦略的価値はない)」とおどけた検証「The day that I-T died(I-Tが死んだ日)」を受けて作られたものだという。マイクロソフトのドン・ボックスとIT導師のデビッド・チャペルが伴奏している。しかし、ねぇ、と吾輩は苦笑いした。デルが欧州でLinuxモデルを発売するというウワサを速攻で否定したように、きっとアメリカン・パイを作曲したドン・マクリーンも、オリジナルと新バージョンのかかわりを即座に否定したいに違いない。

 などと考えていると、ある仲間からインスタント・メッセージが飛び込んできた。そいつは、迷惑メールを阻止するフィルタに、ランダムな語彙(ごい)だけでなく、いかがわしい連中が好き勝手に送ってくる時代遅れのジョークもチェックできる機能を追加すべきだと主張する。「確かにそうだな」と吾輩は応じた。そうすれば、インターネットの草創期から転送され続けている化石のような数々のホラ話もブロックできるだろう。

 また彼によると、Mail-Filters.comの創業者がアンチスパム製品の開発に乗り出したのは、息子が自宅で宿題をせずにオンライン・ポルノを見ていたからだという。「まさに堕落は発明の母だ」と彼は笑った。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Katt Cries: Unchain My Art!

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