[コラム:Spencer F. Katt]
オープンソース攻略はフリーフードで

2005/8/23


 ボストンのうだるような暑さから逃れるため、吾輩は少しでも涼しそうな場所を探すことにした。「熱気は湿気より我慢できる。が、どうしても耐えられないなら」と、吾輩は昔からの決まり文句を口にした。「ゴー・ウエスト、ヤングマン!」

 この場合、年間平均気温18.3度のサンフランシスコで開催されるLinuxWorld以外に選択肢はない。ただ、この1週間、「Vista」のベータ第1版にどっぷり浸かっていた吾輩は、できればマイクロソフトからも逃げ出したかった。しかし、レドモンドの魔の手から逃れることは不可能だった。なにしろ彼らは、オープンソースのこれ以上の氾濫を食い止めるべく、サンフランシスコ全域に特殊工作員を放っていたからだ。

 吾輩は今回、ルーカスフィルムがプレシディオに建設した新しい施設を見学しようとしたが、観光ツアーが中止されていたため、やむなく引き返さざるを得なかった。しかし吾輩は、立入禁止のエリアから、あたかもダースベーダーが2人の突撃隊員を従えて歩いているかのように、3人のマイクロソフト従業員が出てきたのを目撃した。彼らの後を追った吾輩は、やがてモスコーニセンターへたどり着いた。さらに追跡すると、彼らが向かった先は、ITトリビア・コンテスト「ゴールデン・ペンギン・ボウル」の会場だった。

 コンテストでは、マイクロソフトのLinux導師、ビル・ヒルフと配下の“オタク”チームが、グーグルのクリス・ディボナ率いる“マニア”チームとトリビアの覇を競っていた。対戦は、Windows 1.0がリリースされた年を1984年と答えたオタクチームが、マニアチームに完敗した。もちろん正解は1975年だ。司会を務めたノベルのジェレミー・アリソンはルールの説明で、グーグルのチームにGoogle Searchを使わないよう厳命する一方、マイクロソフトのチームには「MSN Searchを自由に使ってかまわない」とした。その理由は、「どうせ何の役にも立たないから」だった。

 モスコーニセンターの外では、オープンソース・ソフトウェアに対するマイクロソフトの攻撃が激しさを増していた。武器はもちろんフリーフードだ。吾輩が手にしたチラシには、「おいしいピザが無料で食べられるのに、どうして10ドルも出してハンバーガーを買うの?」と書いてあった。無料のピザは、表通りを挟んだ向こう側のモスコーニ・ピザデリ店で提供されていた。そして店内では、マイクロソフトのマイク・ホールとダン・ジャブノゾンが埋め込みソフトウェアについて熱心に解説していた。それにしても、なぜ同社はフリーフードをエサに、オープンソース派を“買収”する必要があるのだろう? 同社のあるエグゼクティブはこう答えた。「一生懸命身振り手振りで伝えても、理解されないときがあるだろう。ジェスチャーだけじゃ勝てないのさ」

 ホテルの部屋に戻り、テレビのスイッチを入れると、人気アニメ番組「スポンジボブ・スクウェアパンツ」が放送されていた。とりあえず電子メールをチェックしていると、ある友人からのメールに、先月のマイクロソフト・ワールドワイド・パートナー会議で行われたスティーブ・バルマーのスピーチ映像へのリンクがあった。クリックすると、まさに古典的なバルマー節のオンパレードだ。「NetWareの、Notesの、NT 4.0の、Officeの、あるいはExchangeのインストールベースを考えてみましょう。Blackberryやその他もろもろのデバイスも数多く存在します。が、全世界的に見れば、いずれもインストールベースはわずか数百万に過ぎません」。そのとき、テレビでスポンジボブが叫んだ。「キミ、ちょっとしゃべりすぎ!」

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
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