[コラム:Spencer
F. Katt]
ブログ普及でマーケッターは外食産業へ?
2005/11/1
「コパ、コパカバーナ……」と、バニー・マニロウ風の軽やかなステップを踏みながら、吾輩はブロガーのドンチャン騒ぎ「BlogOn」を取材するためにビッグアップルへやって来た。
おそらくナイトクラブ「ニューヨーク」は、ビジネス・イベントを開催するような場所ではないだろう。例え、WiFiアクセスが提供されていたとしても、利用できる範囲は限られているはずだ。きっとブロガーたちも、そこでは会話による情報交換を余儀なくされているに違いない……。と踏んだ吾輩は、なにはともあれ、きらびやかな夜の社交場へ潜入することにした。
で、案の定というか、店内はブログの信奉者たちで溢れ返り、みんな思い思いにブログの未来を語り合っていた。あるブロガーは、いずれブログがPR会社を時代遅れの存在にするだろう、と主張していた。彼の熱弁を聞いて、吾輩は少し前のITバブル時代、いまとなれば笑い話ではあるけど、地球上のすべての従来型ビジネスはWebにリプレースされるだろう、と多くの人々が予測したことを懐かしく思い返した。
そういえば、マイクロソフトのロバート・スコブルと近く刊行予定の「Naked Conversations」を共同執筆したシェル・イスラエルも、ブログの普及によってPR会社の社員はみんな外食産業へ流れるだろうなどと口走り、誇り高きマーケッターたちの怒りを買っていたな。
それにしてもナイトクラブには、さまざまなブロガーがひしめいていた。例えば、チーフ・カンバセーション・オフィサー(企業のブログ担当最高責任者)だとか、負け犬ブロガー(市場認知度を高めるためにブログに飛びついたジリ貧企業の担当者)もいれば、アルファ・ブロガー(Scobleのような先駆的超有名ブロガー)や手抜きブロガー(会社のブログを押し付けられたやる気のない社員)などなど。まさにネオ・ブロギズムのるつぼというところか。
ところで今回のイベントの取材で耳にした最も恐ろしいニュースといえば、ドナルド・マクドナルドがまもなくブロガーになるという話だろう。マクドナルドはすでに従業員向けにブログの試験運用を始めているが、いずれ正式にコーポレート・ブログとして公開したい考えだ。もしかすると、マックリブの食材やハンバーガーの包装紙の安全性に関する企業秘密がマックブログで明らかになったりして……。
ブロガーの喧騒から逃れた吾輩は、「OutsourceWorld」が開催されているメトロポリタン・パビリオンへ足を向けた。そこは西19丁目のもぐりの酒場と間違えそうなくらい小さな建物だった。吾輩は展示会場でアウトソーシング関係の法律に詳しい専門家と親しくなり、サービス利用者のコンソーシアムというアイデアについて話を聞くことができた。それはアウトソーシングのホールセールクラブといったもので、会員になるとさまざまなプロバイダが提供する多様なサービスを選択的に契約することができる仕組みだという。しかし、倉庫のような店でカートに積み上げるようにしてサービスを買わなきゃならないとしたら、大量に買い込んだサービスをどこに保管しておくかというのも問題だな。
それはさておき、吾輩は友人と情報交換するために10番街の「ザ・レッド・キャット」という店に入った。そこで落ち合った友人の話によると、作家のニコラス・カーが最近、フリー百科事典のウィキペディアをオンラインで批判したらしい。カーは、「平凡な情報の集積」が問題だと指摘して、「書き手が増えるほど記事の質は低下する」現象を「ウィキの法則」と定義したそうだ。彼は、劣悪な記事を一定のフィルターで排除し、記事の品質を管理すべきだと主張しているという。すると、つまり、1812年にクリンゴンが大英帝国と戦った事実はないと言いたいわけだな。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
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