[コラム:Spencer F. Katt]
F1参戦というITライフスタイル

2005/11/15


 “ザ・ガーデン・シティ”で開催された「オープンソース・ビジネス・カンファレンス」を取材するためにマサチューセッツ州ニュートンへ向かっている途中、いつまでたっても完成しない「ビッグ・ディック(ボストン市内の高速道路を地下に埋める巨大プロジェクト)」の工事渋滞に巻き込まれた。吾輩は車線規制が終わるまで、愛車キャットモービルの中で考えつくかぎりの悪態をつき続けた。

 しかし会場に着いて、ノースブリッジ・ベンチャー・パートナーズ主催のCIO円卓会議に招待されたメディア関係者が、出席者の発言を報道する場合は事前に書面による承認を得なければならない、とする誓約書にサインを求められていることを知るや、道路行政に対する怒りなど一気に消し飛んだ。

 吾輩が背中の毛を逆立てて激しく拒否反応を示していると、他の記者たちも次々に声を荒げてサインを拒否した。残念なことに、そうしたまっとうなジャーナリストは、「グレート・オープンソース・ディベート」と銘打たれた会議への参加を許されなかった。主催者側は、JBossのCEO、マーク・フルーリやスパイクソースのCEO、キム・ポレーゼなどのパネリストに、「知りたかったけど聞けなかったオープンソースの疑問」を質問するチャンスだと宣伝していた。冗談ではない。これじゃオープンソースどころか、正真正銘のクローズドソースじゃないか。

 セッションに参加できなかった吾輩は、会場の外で友人からの電子メールに目を通した。メールには、セールスフォース・ドットコムの親分、マーク・ベニオフが同社の戦略委員会のメンバーに送信したメモが添付されていた。そのメモは、マイクロソフトのビル・ゲイツとレイ・オジーが先ごろ発表したインターネット・ベースの新しいソフトウェア・サービスを鼻で笑う内容だった。ベニオフは、「もったいぶったところで、結局は既存のサービスに“ライブ”という単語を付け加えただけだ」とマイクロソフトの新サービスを切り捨てた。

 そしてマイクロソフトの発表を「マイクロソフトが死んだ日」だと言い放った彼は、新しい製品ラインも本来であれば“Windows Dead”と呼ぶべきだと書いている。例えば、Microsoft Office Deadとか、Windows Live Messenger Deadとか。さらにベニオフは、Word LiveやExcel Live、あるいはOutlook Liveの発表がない点について触れ、すでにWritelyやNumSum、Zimbraといった新世代の製品が需要を満たしているからだと指摘し、マイクロソフトのインターネット戦略は立ち遅れていると批判した。

 それはさておき、オープンソース・ビジネス・カンファレンスの会場では、2人の参加者が、OPML(アウトライン・プロセッサ・マークアップ言語)ドキュメントのスペックをテストするvalidator.opml.orgの新しいベータ・オンラインについて議論していた。彼らはまた、サンの株主の84パーセントが敵対的買収を阻止するためのポイズンピル条項に批判的なことを、CEOのスコット・マクニーリはどう思っているだろうか、などと話していた。

 そのとき吾輩の携帯電話が鳴り、周囲の人々の冷たい視線を集めた。電話をかけてきた友人の話によると、IT革命のライフスタイル・カンパニーを標榜するソフトバンクのオーナー、孫正義(彼は「300年計画」の一環として、わがジフ・デービスも一時所有していたことがある)が、ホンダのスーパー・アグリ・フォーミュラーワン・レーシングチームに密かに出資しているとの憶測が流れているそうだ。はたしてF1参戦は、彼の300年計画では何ラップ目あたりになるのかな?

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Shoveling IT

Copyright(c) eWEEK USA 2002, All rights reserved.

Spencer F. Katt バックナンバー

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)