[コラム:Spencer
F. Katt]
HP前CEOがカリフォルニア州副知事に立候補?
2005/12/6
小さなボトルが床に落ちたときの鈍い音が、ハーバード・ビジネス・スクールの「サイバーポジウム」会場の静寂を破った。「ああ、ブラックベリーが……」と吾輩は小声でうめいた。隣席のケンブリッジアンは、ワイヤレス・ハンドヘルド・デバイスを床に落したものと勘違いし、「LCDさえ壊れなければ大丈夫でしょう」などと心配そうに声をかけてくれた。「いや、ご心配なく。いつもバックアップを持ち歩いておりますので」とウインクし、吾輩は上着の内ポケットからもう1瓶、ブランディが入ったミニボトルを取り出した。
気を取り直して、吾輩は基調講演に立ったジム・バルシリーに意識を集中した。彼はここHBSの卒業生で、BlackBerryの製造元であるリサーチ・イン・モーション(RIM)の会長だ。基調講演では、聴衆の1人からWindows Mobile、Palm OS、Symbian OS、そしてRIM OSについて、またそれらのOS間の主導権争いについて質問が出た。それに対してバルシリーは、「OSは問題ではありません」と答え、「人々が買うのはサービスです」と強調した。そして、「RIMのOSはたった200行ほどのコードに過ぎません。自転車に400馬力のエンジンは必要ないでしょう」と言ったあと、「いや、われわれの製品が自転車だと言ってるわけではありませんよ」と笑って付け加えた。
バルシリーはまた、テクノロジー・ビジネスにおける将来予測の困難さについて論を展開した。サーチエンジンの広告で大儲けしたり、PEZディスペンサー(“ペッツ”:キャンディの容器)のオークションをオンラインで始めたらどうなるかなど、いったい誰が予測し得ただろう? 「結局、成功の鍵は、新しいことに手を出す前に本業を確立せよということだ」と彼は結論し、「まずはPEZディスペンサーを集めなさい」と名言を吐いた(※)。吾輩は、その言葉を熱心にノートに書き込む若い学生たちが、文字通りの意味に解釈しないことを望むばかりだった。
(※)プログラマのピエール・オミディアが、PEZディスペンサーを収集する婚約者のために、インターネット上で物品を競売できるWebサイトを立ち上げたのがイーベイの始まりとされる。
そのとき、吾輩は胸のあたりに激しい揺れを感じた。一瞬、心臓発作の前触れかと焦ったが、本物のBlackBerryがポケットの中で振動していた。友人からのインスタントメッセージだった。それによると、ヒューレット・パッカードの前CEOカーリー・フィオリーナが、カリフォルニア州の副知事に共和党から立候補することを検討中だという。もし当選したら、彼女、オレゴン州でも買収しそうだな。
友人に返信していると、今度は突然電話の着信音が鳴った。吾輩はあわてて会場を飛び出し、話し声が周囲の迷惑にならない場所を探した。電話をかけてきた友人によると、コンピュータ・アソシエイツが最近、マンハッタンのミッドタウンに年500万ドルで新しいオフィスの賃貸契約をしたそうだ。友人は、同社がウォールストリート近くのダウンタウンに未使用のオフィスがあるにもかかわらず、新しいオフィスを借りた理由がわからないという。吾輩が「不動産事業でも始めるんじゃないの?」と言うと、友人は「そういえば、マイクロソフトはリース事業を始めるみたいだな」と話し始めた。なんでも、レドモンドは金融機関に対抗して、資金的に余裕のない企業を対象にソフトウェアのリースを始めたい意向らしい。また、ビル&スティーブ・ファイナンスは中小企業向けに、ボリュームライセンスの手引きとなるMPLA(マイクロソフト・プロダクト・ライセンシング・アドバイザー)という新しいオンラインツールも提供する計画だという。
基調講演の会場に戻ると、バルシリーが大勢の学生に囲まれ、四方八方からさまざまなアイデアについて意見を求められていた。ある学生が、居眠りしている人間をたたき起こすデバイスを発明したとバルシリーに話しかけているのを聞いて、「そんなもの、アラーム時計か手ごろな小石で十分だろう」と思ったのは、吾輩だけではないはずだ。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
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