[コラム:Spencer
F. Katt]
バブル2.0の話題に乗れなかったら
2005/12/27
「ああ、2005年」と吾輩はため息をついた。もし、ラリー・エリソンに買収されなかったら、あるいはブログにはまらなかったら、バブル2.0の話題に乗れなかったら、うかつにもVoIPで救急車を呼ぼうと必死にならなかったら、あなたは時代の流れに取り残された1人かもしれない……。
吾輩は年の終わりの静かなひとときをモヒガン・サン・カジノのスイートルームで、エキゾチックな観葉植物に囲まれて過ごした。バンディットのカベルネをグラスに注ぎ、窓の外を眺めていると、今年1年のユーモラスな出来事が次々に脳裏によみがえってきた。
そういえば、2005年は英国のタブロイド紙が、世界経済フォーラムでブレア英首相の落書きだらけのメモが見つかった、と報じたことからスタートした。筆跡専門家が鑑定したところ、「精神的に不安定。強いプレッシャーでストレスがたまっている」という結果だった。ところが後日、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、メモがビル・ゲイツの書いたものだったことを明らかにした。
2月、カーリー・フィオリーナが退社したあとのHP社内を不吉なジョークが駆け巡った。それはこうだ。彼女はどういうわけか天国の門の前に立っていた。すると天使がやってきて、このまま回廊を進み、右手にある最初のドアから入るようにといった。いわれたとおりにドアを開けると、そこは灼熱地獄だった。びっくりした彼女は急いで引き返し、天使に文句を言った。すると天使は答えた。「ああ、言い忘れてました。私たち合併したんです」
春先にボストンで開かれたアバイヤの展示会では、レッドソックスのIT担当ディレクター、スティーブ・コンレーが講演し、今年のスプリングキャンプでWiFiネットワークをセットアップしたが、うまく機能しなかったと話した。取材にやってきた「ゲイ番組」のテレビクルーが持ち込んだ大量の機材と干渉したのが原因だったらしい。
サンが9月に出した新サーバの広告は、「デルより100%以上すごい」とか、「ベンチマークはデルが無価値であることを証明した」という刺激的な表現が並んでいた。サンの照準がどこに向けられているか、一目でわかるものだった。
秋口にニューヨークで開催されたブログのイベント「BlogOn」は、まさにネオ・ブロギズムのるつぼ。チーフ・カンバセーション・オフィサー(企業のブログ担当最高責任者)や負け犬ブロガー(市場認知度を高めるためにブログに飛びついたジリ貧企業の担当者)がいれば、アルファ・ブロガー(Scobleのような先駆的超有名ブロガー)や手抜きブロガー(会社のブログを押し付けられたやる気のない社員)もいた。
サンクスギビングのころ、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフが同社の戦略委員会のメンバーにメモを送信した。それは、マイクロソフトが発表したインターネット・ベースの新しいソフトウェア・サービスを鼻で笑う内容だった。ベニオフは、「もったいぶったところで、結局は既存サービスに“ライブ”という単語を付け加えただけだ」と切り捨て、マイクロソフトの発表を「マイクロソフトが死んだ日」と言い放ち、新製品ラインも“Windows Dead”と呼ぶべきだと書いた。例えば、Microsoft Office Deadとか、Windows Live Messenger Deadとか……。
その夜、ハーマンズ・ハーミッツのコンサートに出かけた吾輩は、ボーカルのピーター・ヌーンが「Something tells me I'm into something good(朝からゴキゲン)」と歌うのを聴いて、新しい年はきっともっとよくなるさ、と少し楽観的な気分になったのであった。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
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