[コラム:Spencer F. Katt]
アルミホイルは電波を増幅する?

2006/1/31


  「お前さんの息の根を止める方法を知りたいよ」とつぶやきながら、吾輩は携帯電話のスイッチを切った。悲しいかな、GNU General Public License 3.0の最初のドラフトが公開されたMITの会場で、吾輩の近くに座っていた出席者たちには、映画「ブロークバック・マウンテン」の感動はまったく効果がなかったようだね。

 吾輩が携帯をオフにしたのは、フリーソフトウェアファンデーションの創立者で今回のドラフト作成にもかかわったリチャード・ストールマンが講演の途中、会場の隅で鳴り響いた携帯電話の呼び出し音に、「自分の居場所を特定されたくなかったら、ケータイのスイッチを切るか、バッテリを取り出しておくべきだな」と不満をあらわにしたからだ。ただ、そのあと彼はこう付け加えた。「もし本当にあなたが必要なら、きっとここまで追いかけてくるはずだ。そのときは私も歓迎する」

 そんなストールマンに出席者の1人から、いまもアルミホイルを携帯しているのか、と質問が飛んだ。彼は持っていなかったが、その質問の背景にはRFIDに対する彼の有名な反対姿勢がある。2005年に開かれた国連世界情報社会サミットでは、出席者全員にRFIDが組み込まれたIDカードが配られたが、監視されることに抗議するためストールマンは自分のバッグをアルミホイルでグルグル巻きにしたり、アルミホイルでシールドした通行証を持ち歩くなどして人々の注目を集めたのだ。

 MITをあとにした吾輩は、ケンブリッジの居酒屋「ミスター・バートリーズ・バーガー・コテージ」に立ち寄り、そこでロータスの古参社員とビールを飲みながら情報交換した。さっそく吾輩は、マイクロソフトが最近発表したツールについて意見を求めた。そのツールとは、以前「Red Bull」というコード名で呼ばれていたもので、IBMのLotus NotesやDominoユーザーをExchangeに移行させることを狙った製品だ。すると彼はこんな冗談を飛ばした。ビッグブルーとレドモンドには、1つの共通点がある。クールなコードネームで開発し、ありふれた製品名でリリースすることだ。「キミはRed Bullという飲み物がMicrosoft Exchange Server Best Practices Analyzer Web Update Pack 2.10.0.1という名前だったら注目されると思うかい?」と、ロータス社員は笑った。彼によると、Dominoツールメーカーのチームスタジオなど、IBMパートナーの一部はすでにマイクロソフトの計画を公に非難し、対策に乗り出しているという。

 自宅に戻った吾輩は、MITのWebサイトを参考に、アルミホイルのヘルメットを作って頭に乗せてみた。このサイトによると、アルミホイルで作成したヘルメットは電波を反射するどころか、逆に増幅してしまうこともあるらしいのだ。

 そのとき突然、吾輩の頭上で火花が飛び散り、ちまたに飛び交う憶測が怒とうのごとく押し寄せてきた。アップルが最近商標として登録申請した「Mobile Me」は、iPod携帯電話の発表が近いことを意味している? オープンソース・インフラ業者のスパイクソースは新しいビジネス・イニシアティブを計画中? それに関連して同社のCEO、キム・ポレーゼは、2月のオープンソース・ビジネス・コンファレンスで何か発表をする? 米国防総省は今後、基地内で秘密車両を操作する間、訪問者による携帯電話の使用を禁止するらしい? 

 煙が立ち昇るヘルメットを脱ぎながら、吾輩は思った。こりゃ、もうアルミホイルは手放せないな……。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
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