[コラム:Spencer
F. Katt]
ビデオ共有サイトを狙う弁護士たち
2006/4/4
アップルがフランス市場から撤退するかもしれないというニュースを耳にしたとき、フレンチホルンは今後「フリーホルン」とでも呼ぶことにするか、と吾輩はつぶやいた。先ごろ仏議会に提出された法案は、同社のプロプライエタリな音楽再生技術を否定するものになるらしい。法案が議会を通過すれば、アップルはiTunesのデジタル著作権管理(DRM)技術「FairPlay」を公開しなければならなくなるという。もしそうなればEU域内における著作権侵害は手に負えないものになるだろう、と同社は激しく反発している。
「フレンチフライも、そうだな、今度からiPodフライと呼ぶことにするか。よし、そうしよう!」と、ソルトレークシティへ向かう機上で吾輩が大声を上げると、隣席の乗客はいったい何事かと目をむいた。
そのソルトレークシティでは、ノベルのBrainShareカンファレンスが開かれていた。が、そこではノベル関係者たちが、自分たちのマーケティングメッセージを無意味に混乱させているだけだった。例えば、同社は次期SUSE Linux Enterprise Desktop 10について、マイクロソフトのWindowsを代替する多機能なOS製品と位置づけ、基調講演の最後でデモを披露すると約束していた。ところが、その基調講演がなかなか終わらない。まるでハリウッドの映画賞のように、ラップミュージックの音量をどんどん上げ、観客の期待を無理やり盛り上げようとするあざとさだ。いっこうにデモが始まらないことに苛立ったプレス関係者の多くは会場を後にした。ホールの外では彼らを連れ戻そうと、バツの悪そうなノベルの広報担当が必死に動き回っていた。
しかし結局、デモが行われないまま、基調講演は終わった。次のセッションが午前11時からスタートするため、尻切れトンボで切り上げざるを得なかったのだ。「まぁ早い話が、Windowsキラーと期待されるノベルのデスクトップを大勢の参加者に披露するより、あとに控えるセッションのほうが重要だったというわけだ」と、記者の1人は冷たく笑って突き放した。
そのあとのセッションで、アナウンサーが「ノベルのLinuxデスクトップエンジニアリング部門担当副社長、ナット・フリードマンと彼のパートナー、ガイ・ルナーディです」と紹介すると、ステージに登場したフリードマンは、かすかな怒気をこめて話し始めた。「いま私のパートナーと紹介されましたガイですが、それは単にプロダクトマネジャーであるという意味に過ぎません。最初にその点だけは明確しておきたいと思います」
そのとき吾輩の携帯電話に着信が入った。電話をかけてきたのは、IT業界のベテランだった。彼は、「ほとんどの企業がいまだにWebをどう取り込むべきか、まったく分かっていない」と大げさに嘆いて吾輩を笑わせた。ベテラン技術者によると、企業のマーケティング部門が「YouTube」にプロモーションビデオをアップロードする一方、まさに同じ企業の顧問弁護士たちが無法地帯と化したビデオ共有サイトを虎視眈々(こしたんたん)と狙っているという。どうやらメディア産業は新たな法務需要を創出しようとしているらしい。アンビュランスチェイサー(交通事故を商売にする悪徳弁護士)ならぬアンビエンス(環境)チェイサーか。
彼はまた、マイクロソフトがVistaのリリースを延期したことに触れ、「そんなになんでもかんでも遅らせるなら、いっそのこと2007年のスタートを遅らせたらどうだ?」と提案した。もしビル・ゲイツが「2006年は12月131日まで」と宣言すれば、彼には3つのメリットがあるという。第1に、もう謝らなくてすむ。第2に、ジム・オールチンがいよいよ引退する。第3に、年末商戦が12月124日まで続く……。
「もしビルに時間を止めることができたら」と吾輩は笑った。「われわれはいまでも期待に胸を膨らませて、Windows MEのリリースを待ち続けているだろうね」
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
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