[コラム:Spencer F. Katt]
アップルの「ハロー、グッドバイ」

2006/6/20


 「ビートルズとスティーブ・ジョブズは、本当に共通するところが多いね」と吾輩は笑った。リンゴの商標をめぐって争っている両陣営だが、いずれもインド脱出の素早さには目を見張るものがあった。1968年、当時人気絶頂だった4人組は、マハリシ・マヘッシ・ヨギに突然幻滅し、リシーケシからの歴史的なエクソダスを断行した。一方のジョブズは、今年4月にオープンしたばかりのバンガロールの拠点を突然、閉鎖した。アップルのバンガロール開発サポートセンターは600人の従業員を雇用するはずだったが、初期スタッフ30人をレイオフしてドアを閉めた。「Isn't it a pity……」と、毛むくじゃらのジョージ・ハリソン・ファンは静かに口ずさむばかりだ。

 と、そのとき、キャットフォンから“Here Comes the Sun”のメロディーが流れてきた。電話をかけてきた友人は、「一部のサン・ウォッチャーが指摘しているように、サンのリストラ計画は売上の大幅な落ち込みに備えた動きだろうか?」と吾輩に聞いた。CEOのジョナサン・シュワルツが、従業員5000人をレイオフして、西海岸のオフィスをいくつか売却すると発表したことを心配しているようだ。業界では、サンがハードウェア・ビジネスに見切りをつけ、経営資源をソフトウェアに集中させるのではないか、との憶測も飛び交っている。「シュワルツは前CEOのマクニーリさえできなかったハードラインな意思決定をやりたいだけなんじゃないの」と吾輩は答えた。もっとも、いずれにせよ、サンにとっては悪くない決断だろう。いまはとにかく株主を喜ばせる必要があるからね。

 電話を切ったあと、吾輩はデルが最近、証券取引委員会(SEC)に提出した報告書をチェックした。それによると、同社は2006年度、創立者で会長のマイケル・デルの個人宅のホームセキュリティに99万1000ドルも計上していた。その莫大な金額の4分の3は、おそらく“スティーブン”(訳注:デルのテレビCMに登場する人気キャラ。親や周囲の人々に同社のパソコンをしつこく売り込む少年)が自宅に近づかないようにするための支出に違いないな。

 吾輩は息抜きに知人の女性と連れ立ってコーヒーショップに向かった。彼女はコーヒーを飲みながら、お気に入りのテレビ番組「アメリカン・アイドル」と「サバイバー」が中断したことを大げさに嘆いた。そんな彼女に、「いまはテレビより、CAを見ているほうが面白いよ」と吾輩はアドバイスした。「もう毎週毎週、アイランディアから誰かがいなくなってる」。最近では、ワールドワイドセールス担当上級副社長だったグレゴリー・カーガンが、甲板から海に飛び込んだ。伝えられるところによると、同社では最高執行責任者(COO)のマイケル・クリステンソンが販売部門の再編に動いているらしい。

 一方、知人の女性によると、SSAグローバル・テクノロジーズの投資家が、インフォ・グローバル・ソリューションズによるSSA買収は不当だとして、集団訴訟を起こしたそうだ。買収額が13億6000万ドルでは安すぎるというのが、その理由らしい。株主たちはまた、小さなソフトウェア会社の買収交渉でSSAのCEO、マイケル・グリーンノーが4400万ドル(50億円)相当の株式とオプションを手にしたのも異常だとしている。確かに、まるでカーリー・フィオリーナだな。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Apple Says 'Hello, Goodbye'

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