[コラム:Spencer F. Katt]
ラリーに手を出すな

2006/7/25


 「敵はあまりに多く、時間はあまりに少ない」。ボストン・コンベンション&エキシビジョン・センター(BCEC)で開催された「Microsoft Worldwide Partner Conference」を徘徊しながら、吾輩は苦笑いした。セールスフォース・ドットコムから欧州連合まで、あらゆるところで敵対するマイクロソフトだが、カンファレンスでのメッセージは明確だった。すなわち、マイクロソフトにとって最大の強敵は、いまもビッグブルーであるということだ。とくにIBM Rationalソフトウェアに対する警戒心は強い。

 しかし、大手システムインテグレータのエグゼクティブは、マイクロソフトからビッグブルーの悪口を1日中聞かされても、同社のライセンスポリシーに対する懸念は払拭できないという。その理由は、マイクロソフトの姿勢に柔軟性がなく、しばしばエンドユーザーを直接囲い込もうとするからだという。たしかに理にかなった不満ではある。

 それはともかく、面白いことに会場のプレスルームに置かれていたコンピュータには、すべてFirefoxとInternet Explorerがインストールされていた。オープンソース・コミュニティに媚(こび)を売っているか、それともIEがバグだらけであることをマイクロソフト自身が認めたかのどちらかだな。

 マイクロソフトの大ボス、スティーブ・バルマーは、「われわれはもう2度とこのような大きなギャップは作らない」と宣言した。なんのことかというと、Windowsバージョン間の時間的空白をなくすというのだ。そういえば、と吾輩も先日痛飲してから、かなり時間的空白があることに気がつき、とりあえずネッド・デヴァインズ・アイリッシュパブへ向かった。

 そのパブで親しくなったネイビー関係者の話では、どうやら米国海軍がファイアウォール関連の特許の取得に動いているらしい。セキュリティの専門家として知られるブルース・シュナイアのブログによると、すでに海軍研究所は、コンピュータ・セキュリティを強化する新しい手法に関して特許を出願済みだそうだ(US特許20050022023)。

 一方、ほろ酔い気分のセーラーマンによると、ロバート・F・ケネディ・ジュニアが自動投票集計機の大手メーカー2社を相手取り、マシンのセキュリティに問題があるとして訴訟を起こす構えを見せているそうだ。

 と、そのとき、吾輩のポケットの中で携帯電話が鳴った。かけてきた情報屋の話では、マーキュリー・インタラクティブがストックオプションの付与日を実際よりも前の日付にしていた問題で、米証券取引委員会(SEC)が調査に入ったが、マーク・アンドリーセンのオプスウェアもそのとばっちりを受けたという。2002年にオプスウェアの最高財務責任者(CFO)に就任したシャーリン・アブラムスが辞任したのだ。彼女はオプスウェアに入社する前、マーキュリーでCFOをしていた。その絡みでSECの調査を受けたことが、今回辞任にいたった原因らしい。

 電話を切ったあと、吾輩は船乗りの密告者と一緒にもう1杯オーダーした。すると彼は、Linux業界でいま、オラクルがレッドハットのサポートビジネスに乗り出すかもしれないという観測が飛び交っている、と教えてくれた。オラクルのラリー・エリソンは以前、レッドハットのサポートサービスをこき下ろし、自社の顧客向けにレッドハットのサポートを展開する可能性について示唆していた。巷の噂では、レッドハットのJBoss買収にも、独自にミドルウェア会社を物色中とみられるエリソンは好意的な反応を示さなかったという。

 今は亡きジム・クロウチ風に言えば、“天に向かって唾を吐くな。スーパーマンのケープを引っ張るな。そしてラリーに手を出すな”ってとこかな。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Microsoft Stings the Blues

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