[コラム:Spencer
F. Katt]
裁くのは吾輩だ
2006/8/1
その日のボストンはうだるような暑さだった。探偵マイク・ハマーを世に送り出した作家ミッキー・スピレインが死去したという悲しいニュースが飛び込んできた。だが、業界ゴシップを追跡するハードボイルドな吾輩に、彼の死を悼む暇はなかった。
警察車両のサイレンを背後に聞きながら、吾輩はカーブの手前でステアリングを切り、キャットモバイルを路肩に寄せた。青い騎士団がそのまま通り過ぎると、吾輩はニヒルな笑みを浮かべ、おそらく彼らは“vishing”の新たな餌食となった被害者の元へ急いでいるに違いないと思った。“vishing”というのは、VoIP技術を悪用した新手のフィッシング詐欺だ。フィッシングと異なるのは、引っ掛ける仕組みが偽のWebリンクではないところ。IP電話で不特定多数に電話をかけ、相手が出たら自動音声メッセージで巧みに誘導し、クレジットカード番号などの個人情報を詐取する。とにかく特定の地域でランダムに電話をかけまくるらしいから注意が必要だ。もっとも預金取引明細に記載された銀行の電話番号にかけたら、すぐに通報されちゃうぞ。
それはさておき、吾輩はようやくバンビーノという名前の場末の居酒屋を見つけた。店に入ると、すぐに背の高いテキサス訛りの男が近づいてきた。商用でボストンにやって来たという男は、ウイスキーのビール割りを片手にすぐ話し始めた。彼の情報によると、デルの株主たちが、同社の歴史始まって以来となる配当金の支払いを求めて立ち上がろうとしているらしい。リンダ・ストーンブッシュ氏が先導する株主側からの配当金要求にデル側は否定的で、むしろ株式の買い戻しなら応じるとの立場だという。
「デルは、おそらく儲けた金を新しいビジネスに投入したいと考えているはずだ」と、吾輩は同社が近くダラスに、そして年内にニューヨークに直営店を出店する計画がある事実を指摘した。するとテキサス男は、「ああ。しかし、デルはシアーズと組んで失敗した方法にまたトライするつもりか」とつぶやいた。確かに、店内に設置したキオスクでオーダーを受けて完成品を宅配するって仕組みは、あまり“ダイレクト”な感じではないな。
テキサス・コネクションは勘定書きを取り上げながら、最後にもう1つ教えてくれた。ゲートウェイがサウスダコタ州ノーススーシティに、従業員130人を新規雇用して、新しい技術サポートセンターを開設するらしい。
雷雨の中をオフィスに戻ると、キャットフォンが鳴っていた。電話をかけてきたのはMacオタクの情報屋だった。そいつの話によると、アップルは来月開催するWWDC(世界開発者会議)で、動画ダウンロード・サービスの発表を行う模様だ。もちろん映像管理じゃなくて、映画のレンタルだろう。情報屋はさらに、ウォルマートがMySpace.comスタイルのソーシャル・ネットワーキング・サイト「schoolyourway.walmart.com」を立ち上げるらしいと教えてくれた。どうせまたみんな、お気に入りの曲は「Dueling Banjos」なんて書くんだろう。
部屋を出て行く清掃クルーに「お疲れさま」と挨拶して、吾輩は机の中からジョニーウォーカーのボトルを取り出し、そのままグビグビとラッパ飲みした。それからWebサイトをあちこち徘徊していると、ウィル・シプレーというブロガーがビル・ゲイツ宛てに書いた公開書簡を発見した。マイクロソフトの会長が「来年1月までにVistaの出荷される可能性は80パーセント」と言ったことに対して、デリシャス・モンスター・ドットコムのソフトウェア開発者であるシプレーは、「Vistaが1月に出荷されなかったら3万ドルもらう賭けに1万ドル出してもよい」と書いている。「おお、これだ。これは絶対に勝てる!」と吾輩は咆哮し、すぐさまブックメーカーの友人に電話を入れたのであった。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
Tech Pulp Fiction: I, the Kitty
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