[コラム:Spencer
F. Katt]
ザ・ビッグ・マッシュアップ
2006/8/22
吾輩は古い友人の電話番号を書いたメモを探していた。「くそったれ!」と、ポケットの中の紙くずを空中に撒き散らしながら、著しく効率の悪いポケット・パピルス・ファイリング・システムに悪態をついていると、ふと、ロータスの伝説の男、ミッチ・ケイパーが「Chandler」というオープンソース・ツールの開発に資金提供しているという話を思い出した。
ハードボイルド探偵作家レイモンド・チャンドラーにあやかって名付けられたそのアプリケーションは、カレンダー機能に電子メールやインスタント・メッセージングをマッシュアップするものになるらしい。そのほか、メモや走り書きの整理、検索もできるそうだ。なんとなく「Lotus Agenda」をほうふつとさせる個人情報管理ツールだが、来年の早い時期にリリースされる見込みだという。ケイパーはまた、複数のコンピュータで自分のブックマークを同期させることができるFirefoxの拡張機能「Foxmarks」の立ち上げにも関与しているらしい。
ようやく友人の電話番号を見つけた吾輩は、電話をかける前にその番号を携帯電話のメモリに登録しておくことにした。ラスベガスで開催されたセキュリティ・イベント「Black Hat」に参加した友人は、会場でつかんだネタを1つ教えてくれた。それは、IBMがインターネット・セキュリティ・システムズ(ISS)の買収を検討しているというものだ。ISSはセキュリティ関連のアプリケーションやサービスを開発し、インターネットからの脅威に対して企業や組織をプリエンプティブに保護する製品を提供している。それらはIBMのオンデマンド・ポートフォリオにバッチリはまるものばかり。EMCがRSAの買収に数十億ドルを投じてユーザーの信頼感を高めたことを、IBMも十分に認識しているはずだ。
「ほかにネバダ発のニュースはない?」と吾輩が興味深げに問いかけると、友人は「そうだな。そういえば、ネバダ州クラーク郡の前CIO、ロッド・マシーがSAPの副社長に就任したなんて話があったよ」と教えてくれた。なんでもSAPの国際公共セクター産業ビジネス部門を統括するらしい。ふむ。まぁ、ラスベガスにはエッフェル塔もあれば、スフィンクスもあるし、自由の女神だってある。そういった意味では、国際的なビジネス経験は文句なしってところか。
電話を切ったあと、空腹を覚えた吾輩はオフィスを横切り、編集部の冷蔵庫の中から、どう見てもはるか昔に賞味期限が切れたピザをくすねた。ところが吾輩の健康を危惧した編集長は、インターネット・ドメイン登録サービスのゴー・ダディが2億ドルのIPO計画を取り下げるよりもすばやく、節くれだった手から腐りかけのパイを奪い取った。「おい、いくら腹が減ったとはいえ、青い色をしたトッピングのピザなんて食うんじゃない」と、心優しいボスは吾輩にボツリヌス菌の危険性を諭すのであった。
が、腹が減っては何もできない。恥知らずな大食漢は、再び冷蔵庫から同僚のサンドイッチを失敬し、自分の机に戻った。しばらくしてサンドイッチをなくした同僚が、「俺のランチを持っていた奴を見なかったか?」とやって来た。「いや、見なかったね」としらばっくれると、半分あきらめた様子で、「それはそうと、Code4Billって知っているか?」と聞いてきた。「ウイリアム・シャトナーが出た“レスキュー911”のたぐいか?」と吾輩が応えると、友人が説明してくれた。なんでも「Code4Bill」lというのは、ビル・ゲイツの個人的インターンを決める学生コンテストなのだそうだ。今年1月にスタートしたコンテストでは、インドのマドラス出身のアビシェク・クマラスバラマニアンという青年が優勝したらしい。しかし今回、ビル・ゲイツの近くでパーソナルに働くチャンスを目指して、およそ2万人もの学生が参加したそうだ。
それほど注目されているんだから、マイクロソフトはゲイツと彼の忠実な見習いのために、気の利いたコスチュームをあつらえるべきだね。バットマンとロビンみたいなのが、いいんじゃないだろうか。もしパメラ・アンダーソンが同じようなコンテストをしたら、絶対に参加するね、吾輩も。
*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です。
[英文記事]
'The Big Mash-Up'
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