Spencer F. Katt
2006年のカーテンクローズ
2007/01/09
「モルガン病かって? ふん。おそらくキャプテン・モルガン(ラム酒)の飲みすぎでしょう」と、救急救命室の医師は鼻で笑った。ERを出てベンチにしゃがみこんだとき、吾輩は腕に張り付いた正体不明のかさぶた状のものが、数時間前、ホリデーパーティに配達されたピザのモッツァレラ・チーズであることに気がついた。
新しい年がまもなくやってくる。人生のリース契約が更新されるような気分だ。2006年の幕引きにあたり、いろいろあったこの1年をここでちょっと振り返ってみよう。
赤貧にあえぐ吾輩は今年はじめ、アレックス・テューの“100万ドルのホームページ”というアイデアにひどく感銘を受けた。自分のホームページをリンク付きの広告として、ピクセル単位で販売するというスキームを考えた彼は、わずか5カ月間で100万ドルを手にした。
ウィキペディアが上院と下院のIPアドレスをブロックして書き込みできなくしたのも、昨日のことのように憶えている。原因は、議員スタッフたちがライバル議員を蹴落とすために、1000以上もの項目で子供じみた改ざん合戦を繰り広げたからだった。
吾輩は猛スピードで行き交う救急車を眺めながら、SAPのCOO、ロドニー・セリグマンが“SAP”を“ERP”と同義語にしようと目論んでいることを思い出した。今年2月、同社のキックオフ・ミーティングで、彼は「今年中にバンドエイドやクリネックスのようになる」と宣言したが、いまのところまだ実現していない。いずれにしてもこの1年、業界で注目を集めた単語といえば、“マッシュアップ”くらいなものだろう。
そういえば今年は、マイクロソフトの貴重な一面を垣間見ることができた。それは“ザ・ネクスト・ジェネレーション”だ。ダラスで開催された同社のConvergenceカンファレンスで、ビル・ゲイツは6歳になる息子のローリーがいま自動車に夢中で、しばしばカーディーラーのWebサイトにアクセスするため、有望な顧客と勘違いしたディーラーが実際にコンタクトしてきたことを話題にした。またゲイツ家のジュニアは最近、ビルとマリンダに、なぜゲイツ基金には大金をつぎ込むのに自分にはそうしないのかと、しばしば問い詰めるようになったそうだ。一方、レドモンドの大物、スティーブ・バルマーは雑誌のインタビューで、「私は子供たちを洗脳している。グーグルとiPodだけは絶対に使うなってね」と語っている。シアトル市の社会福祉課は、この2つの家庭が抱える問題をちゃんと把握しているだろうか……。
サマータイムにはラリー・サマーズがハーバード大学の学長を辞任し、オラクルのCEO、ラリー・エリソンはそれを理由に、同大学へ1億1500万ドル寄付する約束を反故にした。IP電話で不特定多数に電話をかけ、相手が出たら自動音声メッセージで巧みに誘導し、クレジットカード番号などの個人情報を詐取する“vishing”という新手のフィッシング詐欺が話題になったのも、その頃だった。
そういえば、マイクロソフトがiPodキラーに付けた名前“Zune”は、カナダのスラングで男性性器を指す言葉に似ているなんて話もあった。きっと“nano Zune”なんか出しても、男は誰も買わないだろう。
タクシーで家に戻る途中、吾輩は今年のコメント大賞もスティーブ・バルマーで決まりだなと思った。フロリダ州オーランドで開催されたガートナーの「Symposium/ITxpo」で、新規ビジネスへの本格進出を宣言したバルマーは、「ただ口を開けていても、骨は空から降ってこない」と力説、「われわれは進み続けなければならない。前へ、前へ、前へ前へ前へ前へ前へ」と、熱病のように叫び続けた。吾輩は犬に生まれなかった幸運に感謝したい気持ちでいっぱいだ。
英文タイトル:Time for bows folly as curtain closes on 2006
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