Spencer F. Katt

テレプレゼンスとシェイクスピア全集

2008/03/25


 優れたIT企業は「自分のところのドックフードなら喜んで食べる」くらい自社製品に自信を持っている、というのがシリコンバレーの常識だ。あいにく吾輩はドッグフードを食べないのだが、その常識が適用されないケースもときにはあるようだ。シスコシステムは、間違いなくそうした企業の1社だろう。

 最近、シスコはテレプレゼンス製品を猛烈な勢いでプッシュしている。テレプレゼンスというのは、最近注目を集めるウルトラハイエンド高画質実物大テレビ会議システムのことだ。人気テレビドラマ「24」にもしばしば登場する。あるエピソードでは、大統領が災害回避のために外国の首脳と緊急に話し合う必要が生じ、テレプレゼンスを使って議論するシーンがあった。シスコは各地のさまざまな産業見本市に出展し、この技術をいま大々的に宣伝しいている。

 ところが先日、シスコの記者発表に出席した吾輩や他のプレス関係者は、同社が「いいかげんアップグレードしろよ」と悪態をつきたくなるような旧式のテレビ会議システムを利用しているのを見て、いささか失望を禁じえなかった。なにしろそのシステムというのが、むやみやたらとビジーシグナルを連発し、セッティングに手間取って相手が出てこなかったり、途中でまったく動かなくなったりと、散々なものだったのだ。

 そのとき吾輩は考えたね。電話回線を使った普通の会議システムでさえこれほど手間取るというのに、最先端技術がてんこ盛りのテレプレゼンス会議システムを導入した日にゃ、いったいどうなるというのだ? いやまて。もしかするとシスコは、旧式の会議システムを最新のテレプレゼンス製品にアップグレードする必要性をアピールするために、われわれを呼びつけたのかもしれない……。

 シスコが小手先の技術で市場開拓に力を入れている分野は、なにもテレビ会議システムだけではない。同社は現在、新製品「ASR 1000」ラインで、ミッドレンジ・ルータ市場におけるシェア回復を目指そうとしている。シスコ関係者によると、19ユニットを搭載したシングルラックのASR 1000は、シェイクスピア全集を1秒間に5250回も転送する能力があるらしい。ド派手なテレビ会議システムより、こっちのほうがはるかに魅力的な製品だと思うけどね。

 先週も吾輩の元にはたくさんのメールが届いたが、最も目を引いたのは、ラスベガスで開催されたマイクロソフトのMIXコンファレンスに出席した仲間からの目撃情報だった。メールの発信者によると、マイクロソフトのチーフ・ソフトウェア・アーキテクト、レイ・オジーは、じつに気取らないタイプの男だったそうだ。彼はあまり表舞台に登場せず、マイクロソフトのソフトウェア戦略を語るスポークスマンとしては力不足だとして、一部のメディアから批判されている。MIXでは、会場の警備員からマイクロソフトのトップエグゼクティブとして認識されず、ちょっとした騒ぎになったそうだ。

 仲間の目撃談によると、コンファレンス会場となったベネシアン・リゾート・ホテル・カジノで、グレーのスーツ姿にノーネクタイのオジーを不審に思ったセキュリティガードが呼び止めたそうだ。彼はそのとき運悪く、コンファレンス入場証を持っていなかった。行く手を阻まれたオジーは、しきりに不審者ではないことを訴えていたらしい。だが結局、彼のスピーチライターが駆けつけ身元保証人になるまで、彼がその場から解放されることはなかったという。

[英文タイトル] Katt yearns for TelePresence

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