Spencer F. Katt

グーグルとセールスフォース・ドットコムはお似合い?

2008/06/24


 グーグルにセールスフォース・ドットコム買収を提案した451グループのレポートがインターネット上で公開されてから、わずか数時間で吾輩のメールボックスは満杯になった。多くの読者や事情通が、それに関する賛否を書き送ってきたのだ。

 ある読者は、何人かの業界アナリストのコメントを引用して、こう指摘した。「グーグルはエンタープライズ市場で売り上げを伸ばしていない。グーグルは優れたコンシューマ企業ではあるが、エンタープライズ市場は未開拓だ。このままの状態が続けば、マイクロソフトのように、いずれ広告とERPの狭い隙間で身動きが取れなくなるだろう」

 一方、それほど楽観的ではない意見も少なくなかった。サイモン・ガントレーは、「グーグル・セールスフォース連合など、タイム・ワーナーがAOLを買収したとき以来の最悪のアイデアだ」と切り捨てる。なかなか手厳しいな。「セールスフォースはグーグルのビジネスパートナーとして、それなりに意味のある存在になるかもしれない。銀行が心強いビジネスパートナーとなるように、だ。しかし、この組み合わせは、さまざまな理由で悲惨な結婚になる」とガントレーは断言する。

 その理由の1つは、グーグルがユーティリティ・ハードウェアとオープンソース・ソフトウェアに依存していることだ。それに対してセールスフォース・ドットコムは、サンのマシン、Solaris、Oracleなどを基盤としている。

 ガントレーはまた、セールスフォース・ドットコムがかろうじて利益を上げているものの、巨大なコスト構造を抱えている点を指摘し、「Microsoft DynamicsがSaaSで利用可能になれば収益性は一気に悪化するだろう」とみる。吾輩は、まぁ、その主張にいささか懐疑的ではあるけどね。マイクロソフトのSaaS戦略には、まだ不透明な部分も多い。

 ではグーグルでなければ、セールスフォース・ドットコムを買収して得をするのは、どこだろう? ある読者は、オラクルがピープルソフトやシーベル、BEAの買収を完全に消化できれば、有力な候補になると示唆する。確かに、オラクルはつねに企業買収のトリガーに指をかけており、巷のうわさでも、同社は今後さらに数十億ドルを投じて節操のない買収戦略を突き進むらしいから、その意見には吾輩もうなずける。ただ、だからといってセールスフォース・ドットコムがオラクルの買収ターゲットになるとは、必ずしも限らない。というのも、オラクルによるセールスフォース買収を肯定できる理由と同じ数だけ、否定できる理由を考えることができるからだ。

 いずれにしても、6月初旬、オラクルのCEOラリー・エリソンは、企業買収ではなく、もっと別のことを考えていたに違いない。そのとき彼は、BMWオラクル・レーシングチームの新艇「USA-17」の操舵手として仏マルセイユで開催されたアウディ・メッドカップに参戦し、アメリカズカップの現チャンピオン、スイス・アリンギ・チームへの挑戦権をかけて帆走していた。

 一方、そのころ、セールスフォース・ドットコムのCEOマーク・ベニオフは、ニューヨークのダウンタウンにあるレストラン「バター」で顧客たちとテーブルを囲み、うまい料理に舌鼓を打っていた。じつは吾輩もゲストとしてその会食に参加したのだが、今回はお気に入りの鱈のグリルではなく、最高級のカベルネでリブステーキを楽しんだ。

 その豪勢なテーブルに同席した別のゲストが、「セールスフォース・ドットコムのスタッフがもう少し食事の時間を減らせば、アップグレードのダウンタイムに苦しむ顧客がどれだけ助かることか」と皮肉を述べると、ベニオフは「いや、わが社でもアップグレード・ウインドウを15分以内に終了できるよう努力している」と、口をモグモグさせながら反論した。15分ねぇ。パーティが終わったあと、うたた寝するのには十分な時間だな、と吾輩は思った。

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