読者調査結果

@IT読者調査結果:ネットワークエンジニア編(1)
〜運用管理業務のアウトソーシング状況は?〜

小柴 豊
アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2004/11/3

 多くの企業がビジネスの選択と集中を進める中、企業内ネットワークの運用管理業務においても、外部委託=アウトソーシングが注目されている。最近では通信事業者やシステム・インテグレータに加えて、さまざまなITベンダから“マネージド・サービス”をうたうメニューが提供されているが、ネットワーク管理の現場では、どのような業務の外部化が求められているのだろうか?@ITのネットワーク系2フォーラム(Master of IP NetworkSecurity&Trust)が共同実施した読者調査の結果から、その状況をレポートしよう。

ネットワーク運用管理の業務課題とは?

 初めに読者のかかわるネットワークが、現在どのような運用管理上の課題に直面しているのか、確認しておこう。図1のとおり、回答者全体の54%が「セキュリティ対策の高度化・工数増加」に悩んでいるほか、「ネットワーク管理要員の不足/技術力の向上」「ネットワーク構成の多様化・複雑化」といった項目が上位に並んでいる。オープン化やWebコンピューティングの普及は、企業に物理コストの削減や新たなビジネス機会をもたらす一方、そのインフラを支える運用管理業務の負荷を高め続けているようだ。

図1 ネットワーク運用管理上の課題(複数回答 N=354)

運用管理業務のアウトソーシング状況と問題点

 図1の状況から、管理工数削減/人的リソース不足解消につながるアウトソーシングの需要は高いものと推測される。そこで読者のネットワークで実際にどの程度アウトソースが進んでいるのか聞いた結果、「運用管理業務の大半をアウトソースしている」および「外部委託可能な一部の業務をアウトソースしている」の合計で37%となった(図2)。ちなみにこのデータをネットワーク規模別に分析すると、クライアントPC100台未満の企業では27%、同100台以上では50%となり、ネットワーク規模が大きくなるほどアウトソーシング活用率が高いことが分かる。

図2 運用管理業務のアウトソーシング状況(N=354)

 とはいえ全体の4割が「利用予定はない」と答えている現状を見ると、単純にアウトソーシング需要が本格化しているともいい切れない。読者に運用管理業務のアウトソーシングを妨げる問題点について尋ねたところ、

  • (アウトソーシング先は)内部に比して技術力は高いものの、費用が高い。特にネットワーク管理はトラブルが発生しなければその存在自体が目立つものではないだけに、コストが高く感じられる


  • 機密情報/個人情報の取り扱いが増えていくほど、アウトソースしにくくなると感じている。基本的に自社内で完結させるべきではないか


  • アウトソースすることによる技術力の低下を懸念。詳細なドキュメント類は自社で必ず作ることをルール化しているが、技術力の低下は最優先課題となっている

といった意見が寄せられた。実際にアウトソーシングを進めるためには、リスク分析に基づいた費用対効果の定量化や、外注先を含めたセキュリティ・ポリシーの策定/コンプライアンスなど、さまざまな準備が必要なようだ。アウトソーシングによる社内技術力の低下については、下記関連記事による対処も参考になるだろう。

関連記事:
アウトソーシング時代の人材スキル・マップを考える (@IT情報マネジメント)

今後利用したいアウトソーシングはセキュリティ管理業務

 ところで具体的にどのような業務をアウトソースしているのだろうか?現在利用しているサービス内容を聞いた結果、ベーシックな「サーバ機のホスティング/ハウジング」に続いて、「LAN・WANの構成/障害/帯域管理」「ユーザーサポート/ヘルプデスク」が上位に挙げられた(図3 青棒グラフ)。一方、今後利用を予定・検討しているサービスでは、「セキュリティ管理」がトップとなっている(図3 赤線グラフ)。図1で見たように、セキュリティ対策の高度化・工数増加には多くの管理者が頭を悩ませている。セキュリティ管理の外部委託は、今後のアウトソーシング・サービスの柱となっていきそうだ。

図3 アウトソーシング・サービスの利用内容(複数回答)

アウトソースしたいセキュリティ管理業務とは?

 今後注目されるセキュリティ管理アウトソーシングについて、もう少し掘り下げてみよう。図4は、セキュリティ管理アウトソーシングを利用/予定している読者に、該当する業務内容を聞いた結果だ。ここ数年大規模感染事件が続いている「ウイルス対策管理」をはじめ、「不正侵入検知/防止」「ファイアウォール管理」など、管理者が日常的に手を煩わせている業務が上位に並んでいる。これらはツールの導入後も継続して監視/更新が必要な業務であるだけに、アウトソーシングのニーズが高いものと思われる。

図4 アウトソースしたいセキュリティ管理内容(複数回答 n=109)

アウトソーシングに望まれるのは
  ワンストップ・ソリューション型のサービス

 では読者のネットワークで今後アウトソーシング先を選定する際、どのようなポイントを重視し、どのような事業者に業務を委託するのだろうか。

 まずアウトソーシング先選定時の重視点を見ると、トップには「実際の障害発生時のトラブル解決能力が高いこと」が選ばれた(図5)。これは至極当然に聞こえるが、実際証明するのが難しいポイントでもある。自社のトラブル解決能力をいかに実証できるかが、選ばれるアウトソーサーの条件といえそうだ。また次点には「施設から関連サービスまで、1社でまとめて提供できること」が挙げられた。逆に専門特化型の事業者も5位にランクされているが、現時点では“ワンストップ・ソリューション”型のアウトソーシングを望む意見が優勢であるようだ。

図5 アウトソーシング先選定時の重視点(複数回答 n=211)

 次に読者が利用/予定しているアウトソーシング事業者の業態では、「通信事業者/キャリア」および「システム・インテグレータ」が僅差でトップに並んでいる(図6)。両業態とも上述したワンストップ・ソリューション型のサービス提供企業が多いだけに、今後ともアウトソーシング市場をリードしていくことが予想される。

 
図6 利用/予定しているアウトソーシング事業者の業態(複数回答 n=211)

調査概要
調査方法 Master of IP Network/Security&&TrustフォーラムからリンクしたWebアンケート
調査期間 2004年7月27日〜8月20日
有効回答数 354件

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