@IT読者調査結果:システム管理者編(1)
〜サーバOSの選択状況は?〜
小柴 豊アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2004/11/10
レガシーマイグレーション施策やTCO論争など、次代のシステムプラットフォームをめぐって、日々多くの情報が飛び交っている。果たしてシステム管理の現場では、今後どのような基準でサーバOSを選択していくのだろうか? @ITのシステム管理系3フォーラム(Windows Server Insider/System Insider/Linux Square)が共同で実施した読者調査から、その状況をレポートしよう。
■利用サーバOSの過半数はWindows
はじめに、読者がかかわるシステムで現在主に利用しているサーバOSを確認したところ、「Windows NT Server」「Windows 2000 Server」「Windows Server 2003」を合わせたWindowsサーバの利用率が合計57%となり、全体の過半数を占めた(図1)。またWindows以外でもLinuxのシェアが商用UNIX(Solarisなど)を僅差で上回るなど、IA(x86)サーバを主軸としたオープン系OSの普及状況がよく分かる。
図1 現在の主利用サーバOS (N=683) |
なお上記データは回答全体を単純集計した結果であり、システム規模や用途によって状況は変わってくる。例えばユーザー数1000人以上の大規模システムでは、商用UNIXの利用率が34%に上り、Windows(合計33%)、Linux(21%)を上回ったことを付記しておこう。
■現システムの問題点と今後の課題
次に上記のシステムで、現在改善が求められている問題点や今後の検討課題を尋ねた結果、「システム性能/パフォーマンスの向上」、「ユーザーの利便性/業務生産性の向上」、「セキュリティ管理の強化」といった項目が上位に挙げられた(図2)。これらはプロプライエタリなシステム+クローズドネットワークから、オープンシステム+インターネットへの転換プロセスに伴って、必然的に表面化してきた課題ともいえそうだ。
図2 現システムの問題点/検討課題 (複数回答 N=683) |
ところで管理者の課題意識は、利用しているサーバOS別に違いがあるのだろうか。図2のデータをWindows管理者とLinux管理者に分けて集計した結果が、図3だ。両者の主な相違点を見ると、Windows管理者では「ユーザーの利便性/業務生産性の向上」、Linux管理者では「システムを構築・管理できる人材の不足」や「システム運用管理工数の削減」を課題視している読者が多いことが分かる。Linuxに習熟したエンジニアの不足は、いまだに同OS普及のハードルとなっているようだ。
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図3 利用OS別 現システムの問題点/検討課題 (複数回答 N=683) |
■サーバOSの勢力図は変動する可能性も
続いて読者のかかわるシステムで、今後どの程度サーバOSの更新/変更を予定しているのか尋ねたところ、全体の29%が2004年度中または2005年度以降の変更を予定していることが分かった(図4)。それに加えて28%が「将来に向けて、検討は始めている」としていることから、現在のサーバOS勢力図は、今後変動する可能性を秘めているもようだ。
図4 サーバOSの更新/変更予定(N=683) |
■今後採用予定のサーバOSはWindows Server 2003が最有力
図4でサーバOSの変更を予定・検討していると回答した読者に、その最も有力な候補を尋ねた結果が、図5だ。現在の主利用OSと比べると、Windowsプラットフォームでは最新の「Windows Server 2003」採用予定率の高さが目立っている。それ以外では汎用機/オフコンと商用UNIXが微減、Linuxが微増しているものの、全体的に大きな変化は認められない。
図5 今後採用予定/検討しているサーバOS(n=396) |
■サーバOS選択で重視されるのは、学習しやすさとコスト
では読者は、どのような点を重視して次期サーバOSを選択するのだろうか。図6のとおり、全体的には「導入・保守コスト」「OSの機能/性能」がトップに並び、「導入・管理が簡単/学習しやすいこと」「既存ソフトウェア/ハードウェア資産との互換性」がそれに続いている。
図6 今後のサーバOS選択時の重視点(複数回答 n=396) |
上記サーバOSの選択重視点を採用予定OS別に見たのが、図7だ。ここでもWindows採用予定者とLinux採用予定者の差異をピックアップすると、Linux採用予定者では「導入・保守コスト」や「オープンソースであること」の重視度が高いのに対し、Windows採用予定者では「簡単/学習しやすいこと」および「既存資産との互換性」が最重視されている。現時点でのWindowsとLinuxの採用予定率の差は、ライセンスコストよりも学習/移行コスト(=時間/工数)を重視する管理者が多いことを意味しているのではないだろうか。
図7 導入予定OS別 サーバOS選択重視点 |
ここまでの結果からは、WindowsがサーバOSの主流としての地位を確立したように見える。しかし同時に読者からは、以下のようなコメントも少なからず寄せられた。
- 本来Linuxでサーバを構築したいが、Linuxエンジニアを継続的に部門内に確保できる保証がなく、仕方なくWindows OSを選択せざるを得ないのが現実
- Linuxを基幹システムのサーバOSに採用したいと考えることはあるが、運用管理を行う者全員にLinuxを教育する余裕がない
- Linuxで構築したいという要望も多くもらうが、アプリケーションの対応やサポート/コスト面で問題が多く、Windowsを採用するケースがほとんど
- WindowsはCALのコスト問題があり、導入予定のIT資産管理ソフトにLinux版があればそちらを選択する
これらの声を聞くと、現在のWindows採用予定者の中には、相当数の“消極的支持層”も含まれているものと思われる。上述したような“簡単/学習しやすく、既存資産との互換性が高い”OSがローコストで提供されれば、状況は大きく変わる、かもしれない。
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