サーバ仮想化やストレージ統合で起こる
ストレージの役割の変化にどう対応していけばよいのか?
ストレージで
企業のIT課題をどう解決できるか
2012/06/01
ストレージで企業のIT課題にどう対処できるのだろうか。VNXとアイシロン、それぞれについて、データ運用の課題がどのように解決できるのかを2製品のパートナーに聞いてみよう。
仮想化環境におけるストレージの役割や要件とは?
仮想化案件でEMCのミッドレンジストレージ「EMC VNX」を採用することの多いネットワンシステムズは、仮想化におけるストレージに何を求め、どうストレージを使いこなしているのだろうか。同社 ビジネス推進グループ ビジネス推進本部 第2製品技術部 プラットフォームチーム エキスパートの三木亮弘氏に、仮想化環境でのストレージの役割や要件について聞いた。
――サーバ仮想化やストレージ統合に必要なストレージの要件について、どうお考えですか。
ネットワンシステムズ
ビジネス推進グループ ビジネス推進本部
第2製品技術部 プラットフォームチーム
エキスパート
三木亮弘氏
三木亮弘氏(以下、三木氏):統合の流れとして、以前「ストレージ統合」という言葉もありましたが、当時は日本であまり広がりませんでした。その後サーバの仮想化やサーバ統合ということが出てきて、必然的にストレージも統合されるようになったというのが、今の状況だと思います。そこで第1に考えるべきことは、可用性と安定性だと思います。統合されたストレージは単一障害点になり、ストレージで障害が起こるとシステム障害の範囲が大きくなってしまいます。また、設計の際に何Tバイト欲しいといった容量での要件を出してこられるお客さまが多いのですが、性能の観点でも注意して見る必要があると思います。
――性能要件の予測や準備は難しいですが、どう考えたらいいのでしょうか。
三木氏:ベストシナリオとしては、ヴイエムウェアのような仮想化ベンダのツールを使って、各サーバのワークロードやディスクに対するI/Oを数値化していき、それをサイジングの根拠として統合するシステムを設計するのが一番美しい。ただし、実際にそれができるかというと、期間的な問題であったりツールが使えないサーバがあったりといった問題もあります。そういう時には、計測できるサーバの数値の平均値で代用したり、お客さま側の別のツールで測定して数値を提供してもらったりなど、机上の設計をすることもあります。これは、案件ごとの個別判断になります。
――仮想化やサーバ統合で共有ストレージとして使う場合、いろいろなシステムが相乗りすることになります。アクセスが競合するような環境でのストレージに求められる機能はどういうものでしょうか。
三木氏:I/Oを平準化できるとか、リードとライトの両方に強いといったことが必要です。RAIDの設計でも、ライトに強いRAIDの組み方やリードに強いRAIDの組み方があります。I/O要件でどちらに強いRAIDを組むかということを、実際の設計のフェイズでは検討します。最近では、ライトのキャッシュをSSDのフラッシュディスクで持てる技術も出てきて、それをライトI/Oの性能担保として使えるようになりました。そういう選択肢があると、設計の幅も広がります。仮想化環境では、最初のキャパシティプランニングの時に想定しなかったことが起きることもありますので、運用が始まってからそれらのぶれを吸収できる選択肢を残しておくのが望ましいです。
仮想化環境では、データストアのリポジトリはファイバチャネルにして、データ共有のためのストレージとしてCIFSやNFSを提供するというのをストレージの推奨構成としています。VNXがユニファイドストレージとして進化したのは、世の中のニーズにマッチしていると思います。
EMCのストレージどのような場面で活躍するのか?
――EMCのストレージはどのような場面で適していると思いますか。
三木氏:書き込みの量が読みづらい環境には特に適しています。VNXの機能で、FASTキャッシュとかFAST VPという機能があります。どちらもSSDを使う技術ですが、書き込みをキャッシュできるのがFASTキャッシュです。例えばVDI、デスクトップ仮想化の環境では、書き込みが意外と多い。ログインストリームはほとんどライトのI/Oが来ますので、始業時間には一気に書き込みが増えます。それをどう支えるかが設計で重要になります。ご承知のように、メモリ空間は電源が落ちると消えてしまう世界です。それを、電源が落ちても保持できるようにするという仕組みをFASTキャッシュで提供できます。同様に、仮想化基盤でライトの多いアプリケーションが来ても、FASTキャッシュのような機能を実装していればそれを吸収してくれます。
また、NASの機能をあわせた使い方も有効です。例えばデスクトップ仮想化では、デスクトップのプロファイル情報をファイルサーバに持たせておき、これをリプリケーションすることで災害対策にも利用できます。デスクトップをまるごと復旧するのは手順が複雑になりますが、プロファイルをNAS領域に出しておくと楽になります。
そのほか、仮想化で統合したサーバ群が、バックアップのために個々のアプリケーションのバックアップ機能によってデータをはき出す、そのバックアップ用共有領域としてVNXを使うというケースも考えられます。その共有領域からのデータを開発にも使う。ブロックデータの領域とファイルサーバの両方を運用できるので便利です。
――FAST VPのメリットはいかがですか。
三木氏:FAST VPの方は、仮想化環境というよりはファイルサーバでの効果が高いと思います。アクセス頻度の高いデータをSASやフラッシュディスクのような速い領域に、低いデータをSATAのような遅いけれど安い領域に自動的に振り分けるという機能なので、典型的なユースケースはファイルサーバです。ファイルサーバには、本当に何年も前のほとんどアクセスしないデータがあります。実際に弊社内のファイルサーバではFAST VPを利用しており、35%以上のデータが大容量ディスクに自動配置されることで、コスト効率の向上が図れています。
――ストレージのコストについてはどう考えますか?
三木氏:仮想化では、システム全体の半分かそれ以上がストレージのコストになることもあり、一見、目立つのですが、企業の統合基盤として考えた時にコストをかけるべき部分をお客さまは分かっていらっしゃると考えています。
スタートアップベンダやオープンソースのストレージは、低コストで構成する必要があるテスト環境や小規模なシステムに使います。一方、企業の統合基盤には製品の安定性、信頼性を考えてEMCのようなメジャーベンダの製品をご提案することが多いです。
統合基盤のストレージではサーバハードウェアやハイパーバイザ、バックアップ、データ保護系のソフトウェアなどさまざまな製品との相互接続性が確保されたサポートが必要になります。ストレージとしてもファームウェアのサポートポリシーというのは重要で、導入後にバグフィックスでファームウェアのアップデートやパッチを当てる必要があっても、他の周辺ソフトとの相互接続性の確保が継続されるということがシステムの安定性につながっていきます。
また、EMCはオンラインによるリモートサポートが用意されており、障害切り分け時間の短縮やプロアクティブなサポートも可能になっています。ストレージのコストは安定性、障害対応コスト、運用コストを含めたTCOで検討する必要があると考えています。
アイシロンが注目されるポイントは?
一方、データが急速なペースで増大する環境で、これを効果的に管理するユニークなスケールアウトNAS製品として、注目を浴びているのがEMCの「アイシロンストレージ」だ。これを含め、多数の米国製品を日本に紹介してきた東京エレクトロンデバイスのCN事業統括本部 CN営業本部 コーポレートアカウント営業部部長 小林浩樹氏に、アイシロンの利用メリットを聞いた。
――東京エレクトロンデバイスがアイシロンに注目してきたポイントはどこにありますか。
東京エレクトロンデバイス
CN事業統括本部 CN営業本部
コーポレートアカウント営業部部長
小林浩樹氏
小林浩樹氏(以下、小林氏):当社は、スタートアップ企業の製品を日本で展開するビジネスに力を入れてきました。アイシロンは動画配信のリアルネットワークスにいた人たちが中心となって設立された企業で、ストレージとしてユニークでした。日本にも動画配信サービスをしているお客さまがいたので、使っていただきやすい素材だなということで始めたのが最初です。今でこそ「スケールアウトNAS」は普通に聞かれるようになりましたが、これはアイシロンが最初に言っていた言葉です。
当初のアイシロンのユーザーは動画配信、メディアやエンターテインメント系でした。それが2004年くらいです。10年近くたったわけですが、今はまさに「ビッグデータ」で、動画に限らず非構造化データに対する「バケツ」として使っていただけるものになりました。今ではエンターテインメント系やWeb系だけでなく、企業のファイルサーバとして使っていただいている例もあります。実は、当社もアイシロンをファイルサーバとして使っています。アイシロンは運用管理がシンプルですし、どんどんファイルが増えていっても簡単に増設できる。市場的には、いろいろなところがカバーできるようになったという印象を持っています。
――アイシロンは安価な製品ではありませんが、それでも使われる理由は。
小林氏:トータルでコストを考えれば、アイシロンは決して高くはありません。そもそも普通のNASでは増設が大変です。増設のためのコストもかかります。アイシロンを導入するのは、データが大きく増える可能性のあるお客さまです。例えばフォトプリントサービスをやっていてその画像を保存しておくために導入する。すると、ビジネスがうまくいくと増設が必要になります。それを念頭に置いているようなお客さまということです。ビジネスがうまくいって画像の保管サービスのユーザーが10倍になった時、一般のNASではコントローラーを入れ換えてディスクも総入れ替え、かつファイルシステムをさまざまに 分割して作成したりする必要があります。その場合の運用コストと、ノードを単純に追加していけばいいアイシロンとでは、後者の方が断然安いです。
あるいは、企業のファイルサーバとして使う場合でも、それをデータセンターに置いて、余っている容量を他の仮想化サービスに使うといった例もあります。複数のシステムを共存させても、管理者はアイシロンだけ管理すればいいので非常にシンプルです
データの増え方が読めないときこそアイシロン
――一般的な企業の環境で、いろいろなニーズをアイシロン1台でまかなう場合も、データの増え方の予測がつきにくい点が背景にありますか。
小林氏:やはりそうだと思います。NFSやCIFSでアイシロンを使っていただきながら、余っている容量はiSCSI経由で使うという使い方もできます。最近はHadoopのファイルシステムであるHDFSをサポートしたことで、さらに用途の幅が広がりました。
――アイシロンの利用シーンで、最近伸びているのはどのようなケースですか。
小林氏:ここ数年ですと、やはり当初からの用途である画像系の他、監視カメラや地理情報のデータをため込むといった用途も出てきています。データ量も多く、長期間保存しておかなければいけないというケースもあります。他にもメールのアーカイブや、Webサービスのストレージといったビッグデータ系が大きいです。
企業系の場合は、ファイルストレージ統合という話が出てくるとアイシロンで一元化という話になります。いろいろなベンダのものを統合したいという時ですね。普通のNASでは、事業部ごとにボリュームを切って、1つのボリュームがいっぱいになったらシステム全体の設計を見直して、場合によってはこちらのボリュームを小さくしてそちらを大きくなど、システムをダウンさせて再設定しなければならない。ところがアイシロンは必要な容量なだけノードを追加し、トータルで余裕があれば気にせず使える。システムダウンせずに拡張がはかれるのも、アイシロンの優れた点の1つです。
また、パフォーマンス以外の点でも、アイシロンには、企業における利用でも最適な機能がいくつも提供されています。例えば、クオータという機能。事業部ごとの利用制限を論理的に設定するツールが用意されていて、これも重宝されています。多重障害にも耐えうる高いデータ保護レベル。それを好んで使っているケースもあります。スナップショットにしても、約千世代取ることができて、戻すのも非常に簡単。スナップショット領域を別途用意しなくていいので、運用上は何も気にする必要がありません。そこがアイシロンのポテンシャルの大きさを感じる点でもあります。
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掲載内容有効期限:2012年6月30日
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