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SPSS Data Mining Day 2005 イベントレポート後編

−ユーザー事例 I & II −

 
会場の一角シアターステージでは、
「顧客接点を最適化する」「モデルを構築する」
「データを補強する」という3つのテーマで、
SPSS社員によるプレゼンテーションが繰り返し行われた

ユーザー事例 I 「安心・安全なインターネットライフの提案と提供 
〜@niftyにおけるeCRMの実践例〜」
ニフティ株式会社 マーケティング部 マーケティングチーム
チームリーダー 友澤 大輔氏

ニフティ株式会社 
マーケティング部 
マーケティングチーム
チームリーダー 友澤 大輔氏

 ニフティ株式会社は、個人/法人向けにインターネットの接続サービスや、コンテンツ提供を行っており、現在500万人以上の顧客を抱えるインターネット接続プロバイダー(ISP)最大手である。本事例の発表者、友澤氏によれば、現在、日本のISP市場は約7000億円であるという。ナローバンドからブロードバンドへの移行期にあるものの、インターネット利用者数はすでに飽和状態にあり、また、世界でも類も見ないほどISP間の競争は激しく、価格競争に陥りつつあるという。したがって、他社との差別化を図るためのマーケティングが重視され、特にeCRMといった「マーケティングコミュニケーション」の品質が重要なテーマになってきているという。

 同社がデータマイニングに取り組む背景として、友澤氏は次の4点を挙げる。

  • ニフティ会員としての契約を顧客と結ぶため、顧客との継続的な取引が発生する「顧客ストックビジネス」であること
  • 顧客行動の変化が極めて早いこと
  • 分析体制の整備を図って、分析を自動化し暗黙知を共有する必要があったこと
  • ビジネスの特性上、顧客動向について豊富なデータが収集できること
    (月にテラバイト以上のデータが蓄積)

「データマイニングの適用がしやすいことや、eCRMの適切なコミュニケーションが必要なビジネスを行っているといった背景がデータマイニング導入をあと押しました」と友澤氏は語る。

 それに続けて友澤氏は、データマイニングがそれほど簡単なものではないことを指摘する。

「たとえ企業内に大量のデータがあったとしても、あらかじめ意図して蓄積しているわけではないので、ノイズ、つまりデータマイニングにそのまま使うことができないデータが多く含まれています。ですから、データマイニングツールを購入したらすぐに分析できるというわけではなく、分析の前処理としての“データクレンジング”が不可欠です」

 逆にいえば、データクレンジングさえしっかりやれば、ほとんどのデータマイニングが成功すると、友澤氏は断言する。その一方で、アンケートなどを通じて、より顧客の意識を浮き彫りにするようなデータを意図的に取得することも大切だという。幸い、同社では比較的データが整備され、さまざまな形でユーザーに関する情報を取得していたので、データマイニングに取り組みやすい環境だったそうだ。

 データマイニングは、専門性が高く、実現するためには「時間」と「パワー」が必要であり、効果的な分析結果を得られるまでトライアル&エラーを繰り返し行わなければならないため、分析を高速化させる必要がある。また、分析結果を現場担当者レベルまで共有することができなければROIの向上にはつながらない。こうした課題に対する解として、同社は「Clementine」を選択し、また、関西学院大学、井上哲浩教授のサポートとSPSSのコンサルティングサービスを利用したという。

 友澤氏は、「Clementine」選択の理由について、次の点を挙げる。

  • 分析プロセスがノード図で示されるので、データマイニングについてのナレッジが共有しやすい
  • 同様に、ノード図で分析プロセスが可視化されているため、プロセス管理がしやすい
  • データマイニングの前工程の実行も容易である
  • 1年に1回程度アップデートが行われることで、機能・使いやすさが改善され続けている
  • 顧客からの改善要求が確実に次期バージョンに反映されることから感じられる顧客志向の高さがある
  • 拡張性が高い

 同社は、関西学院大学 井上哲浩教授のサポートとSPSSのコンサルティングサービスを受けることによって、データマイニングについての実践的な学習を素早く行い、マーケティングサイエンスのスペシャリストのノウハウを活用できたという。

 今回発表されたデータマイニングにより同社が得たモデルは「Churn予測モデル(解約しそうな顧客を予測するモデル)」「アップセル予測モデル(より高品質なサービスへの切り替えをする可能性の高い顧客を予測するモデル)」の2つであり、SPSSのC5.0(Clementineに実装されている決定木分析機能の1つ)を用いて生成されたツリーに基づき、顧客セグメントを識別するモデルだそうだ。

 前述のモデル策定の本来の目的としてはコミュニケーション効率の向上、顧客に適した個別施策の実行というのがあり、友澤氏は「データマイニングのプロジェクトとしては成功したといえるものの、eCRMとしての成功のためには分析結果から施策の立案〜実行までをスムーズに実行できる必要があった」という。これまで分析担当者と施策実行担当者が別々に存在していたこともあり、分析結果を施策立案〜実行に十分生かすことができなかったそうだ。

 そこで同社ではこの課題を解消するため、顧客の変化に合わせた「育成シナリオ」と施策立案のための「コミュニケーションシナリオ」を作成し、顧客セグメントと組み合わせたうえで、施策の実施タイミングも含め、分析から施策実行までをほぼ自動化する仕組みを構築した(図1)。

図1 eCRM実現における課題と解決の仕組み

 この仕組みを適用した事例として、同社がWebサイト上で展開した「ウイルスの恐怖展」に関するキャンページの例を取り上げ、キャンペーンの告知メールのクリック率(配信されたe-mailの総数に対し、その中に記載された同キャンペーンページのURLがクリックされた数の比率)が最大16%に達し、キャンペーン期間の2カ月ほどの間に550万ページビューに達する成果が得られたという。

 友澤氏は、顧客セグメントを識別するだけでなく、顧客にあった訴求を実現することでコミュニケーション効果を高めることがポイントであり、eCRM成功のためには、顧客視点に立ったデータマイニングが必須であることを強調して講演を終えた。

ユーザー事例 II 「NTTドコモにおける戦略的情報活用」
株式会社NTTドコモ 情報システム部
情報戦略担当部長 久保田 明氏

株式会社NTTドコモ 
情報システム部
情報戦略担当部長 
久保田 明氏

 演台に立った久保田氏はまず、モバイル業界の現状と展望ついて語ってくれた。現在、約4900万台の携帯電話ユーザーを抱えている株式会社NTTドコモでは、モバイルの発展方向として「マルチメディア化(音声から非音声)」「グローバル化(国内から海外へ)」「ユビキタス化(動くものすべてへ)」という3方向でとらえており、携帯電話サービスは通信インフラからITインフラ、そして生活インフラへと進化し、よりリアルとバーチャルをつなぐ、生活に不可欠なツールになっていくという。いわば日常生活を支える存在になり得る情報サービスを提供する同社の情報活用について、久保田氏は詳細に説明してくれた。

 同社における顧客接点としては、ドコモショップなどの販売代理店、インターネット(iモード、PC)、インフォメーションセンタ(電話受け付け)、ダイレクトメール、請求書などがある。それらの顧客接点から入手した顧客情報は、顧客系システムや料金系システムに反映され、さらにデータウェアハウスに蓄積される。データウェアハウスが設置されたセンターは全国に9カ所あり、全サーバのディスク容量は合計56テラバイト×2台(うち1台はミラー)という大規模なものである。

 そして、NTTドコモグループ9社それぞれ向けに、約200ずつの多次元データベース(Multi Dimension Database)化され、加入期間、年齢、料金プランなど一定の切り口で分析を行う「定型検索」や顧客リストの抽出などの個別情報検索を行う「非定型検索」機能(VIEW)が約800ずつ用意されている(図2)。データウェアハウスは大切な顧客データを扱うため、二重三重の強固なセキュリティ対策が施されているそうだ。

図2 MDDBとVIEW

 同社では、全社的なデータ活用の推進体制を構築するため、これまで部門別、チーム別に存在していたデータを全社的なデータウェアハウスとして一元化し、部門間をまたぐ分析を可能とした。また、情報システム部内に情報戦略担当を設置し、データ活用を通じた全社的な知識創造の支援を図っている。さらに、これまで情報システム部門からデータの分析を受けた業務主管部門が内部でデータ分析を行うという業務フローを改め、データ分析サポート部門を新設した。つまり、分析スキルを持つ同部門が、業務主管部門の分析テーマを受けて支援する体制としたのである。

 久保田氏によれば、同社ではこうしたデータウェアハウスに加えて、データマイニング環境の充実も図っているという。データマイニング専用のサーバ(30テラバイト)を設置し、顧客情報、請求情報、アンケート情報といった基幹系の情報と外部から入手したデータを基に「顧客行動予測モデル」「法人顧客行動予測モデル」を構築しているそうだ。

 久保田氏は、モデル構築の狙いについて次のように語る。

「モデル構築以前は、データはたくさんあったものの、データ間の因果関係が不明確のため顧客行動が予測できませんでした。顧客行動予測モデルの構築により、施策対象の絞込みが容易になり、施策の費用・効果が定量的に推定でき、また、施策をタイムリーかつ効果的に実施できるようになりました」

 個人を対象とした顧客行動予測モデルの一例として「チャーン解約予測モデル」がある。これは、解約者に対するアンケートや契約内容、利用状況といったデータを用いて「解約しやすさ」を予測するものである。このモデルを業務に適用することにより、解約の可能性の高い顧客に絞り込んで施策を打つことが可能となり、効率的な解約防止アクションが実現するという。また、法人を対象とした法人顧客行動予測モデル例としては、特定ソリューションに対して受注しやすい企業を予測するものがある。こちらについても、受注可能性の高い企業を識別して施策を展開することにより、ランダムにアプローチした場合と比較して、より高い効率で受注活動が行えるという。

 同社では、解約防止、受注拡大といったマーケティング施策での活用以外にも、業務プロセスの改善にデータマイニングを活用しているという。顧客に対する応対フローの組み合わせの中で顧客満足度の低いものを発見し、より満足度を高めるような業務プロセスへと改善を図ったり、同社のサービス申し込み受付用のWebサイト(e-siteなど)上の顧客の行動を分析し、顧客がセッションを中断している割合が高いページの改善を行っている。こうしたWebサイトから得られる顧客行動データの分析については「Web Mining for Clementine」を利用しているそうだ。

 同社は、戦略を成果に結び付けるには、収集した情報と社員の知識経験を基に、組織としての知識を創造し、それらを有効な施策へと展開することが必要だと考えている。まさに今回のSPSS Data Mining Dayの基本コンセプトにふさわしい「The Predictive Enterprise」への旅をする企業の手本となる内容の講演であった。

SPSS Data Mining Day 2005 イベントレポート Index
イベントレポート前編 「データマイニングとマーケティング革新
イベントレポート後編 「ユーザー事例 I & II
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掲載内容有効期限:2005年6月30日
 
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