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@IT > SPSS Data Mining Day 2006 イベントレポート前編 |
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「SPSS Data Mining Day 2006」は、今年で8回目の開催である。新高輪プリンスホテルの飛天会場は1500名もの来場者であふれ、同会場内に設置されたSPSS各製品のデモを体験できる「SPSSブース」、パートナー企業のソリューションを紹介する「パートナーブース」、大スクリーンによるプレゼンテーションが行われる「シアターステージ」の各コーナーには、足を止めて熱心に聞き入る来場者の様子が見られた。 さて、当レポートでは、午前中に行われたプレセミナーを除く、午後からの本セミナープログラムについて概要をレポートする。
今年の基調講演には、慶應義塾大学大学院教授 池尾恭一氏が登壇された。池尾氏によれば、戦後からしばらく、日本の消費者は未熟で、リスク回避的であり、小売店員のような人的情報源のアドバイスに基づいて購入製品を決める、相対的には受動的な存在であったという。 しかし、高度成長期、安定成長期を通じて、消費者は徐々に判断力を高め、自らの意思で購入判断を行う「主体的な消費者」が増大してきた。 その一例として、池尾氏は以前ヒットした「シャワー付き洗面台」を取り上げた。従来は、欧米ではやっているものを単純に取り入れてきた日本の消費者だったが、1980年代になると、それまでとは違い、よりよい生活のために自らの判断に基づいて、例えば朝シャン(朝、シャワーを浴びることなく髪だけを洗う)という日本発のライフスタイルを求め、シャワー付洗面台を支持したのであった。 池尾氏は、こうした主体的な消費者の求める価値を実現するためには、消費者行動の「なぜ(その製品は売れるのか)?」を正確に理解する必要があると主張する。
こうした消費者行動の「なぜ?」を探るには、「ネット・コミュニティ」が今後重要な役割を果たすだろうと池尾氏は指摘する。というのも、ネット・コミュニティは企業と顧客との接点を増加させるだけでなく、消費者の購買・消費の全過程を観察できるだけの豊富な情報源であり、消費者行動の「なぜ?」を理解するために役立つ新たな情報収集手段になり得るからだという。
池尾氏は、インターネットの普及によって出現した新たな消費社会を「ネットワーク消費社会」呼ぶ。そして、この「ネットワーク消費社会」に求められる「新しいマーケティングの仕組み」のポイントを次のように示してくれた。
最後に池尾氏は、インターネットを通じた消費者行動は最初からデータ化されているため、購買データとしては非常に優れたものであることを指摘したうえで、新たなマーケティングの仕組みの実現について次のように述べて講演を締めくくった。
SPSSソリューションの紹介では、昨年に引き続き今年もSPSS社員の皆さんが演じる寸劇によるプレゼンテーションが行われた。これは、昨年はじめての試みとして行われたものだが、たいへん好評だったため、今年も選抜された社員は忙しい業務の合間をぬって練習したそうだ。素人離れしたその演技に、来場者は思わず引き込まれていたようだ。
最初に登壇しあいさつに立ったジャック・ヌーナン氏は、SPSS社が9期連続で売上記録を更新していることを述べ、その要因として、新規ユーザーが増えていることと同時に、既存ユーザーとの関係性を強め続けてきたこと、および同社が提唱する「Predictive Analytics(あえて日本語訳すると予測分析)」が組織のパフォーマンス改善に寄与するものとして、関心が高まっていることを挙げた。 「Predictive Analytics」は、さまざまな種類の大量のデータから知見を得て、高い精度で将来を予測することができる。またデータの有効活用と業務プロセスの改善の間をつなぐ“くさり”の役割を果たすものだと、ヌーナン氏は言う。そして、「Predictive Analytics」はどのような分野にも適用でき、その将来性に限界はないと述べた。 「Predictive Analytics」を実践している企業、つまりSPSSが「Predictive Enterprise」と定義している企業はデータを活用することで、データなしでは達成できなかったような結果をすでに得ているといい、今後もそうした実例は増えていくだろう、と締めくくった。 ヌーナン氏のあいさつに続き、寸劇形式のプレゼンテーションが展開された。今回は、データの活用において対照的な架空の損害保険会社2社の社内の様子が描かれた。 1社目のエックス損保は損害保険会社の老舗企業であり、トップの座にありながらも、急速に進む規制緩和による競争激化や損害保険のネット販売の拡大によって苦しい立場にある。そのような現状に置かれているにも関わらず、同社はいまだに古い考え方やオペレーションを変えることを拒み続けているという設定である。
舞台はこんなシーンで始まった。マネージャクラスの人物が、自動車保険の更新率を引き上げるアイディアを出すよう、部下に対して高圧的な言い方で命令する。ところが、社員は、なんら根拠のない思いつきのアイディアを出すばかりである。1人の部下が、「まずは顧客満足度調査をやりましょう」と提案するが、マネージャはこの提案を一蹴する。これまでも社内各部署でさまざまな調査を繰り返し実施してきたのに、そのデータはまったく活用されてこなかったというのだ。 次のシーンでは、同社のコールセンターの顧客対応のずさんさが浮き彫りにされた。保険請求の審査も従来のやり方を脱しておらず、電話に出たオペレーターの説明も要領を得ないため契約者を怒らせてしまう。このままでは、同社の更新率はますます低下していくであろうことが、観覧している来場者には容易に想像できたはずである。 2社目の「SP損保」に場面が移る。まだ規模は小さいものの、変化に対する積極的な対応を図り、「Predictive Analytics」を実践している「Predictive Enterprise」の例だ。SP損保のCEOはまず、昨年の業績が目標を達成したことを部下に告げてその労をねぎらいつつ、「顧客満足度調査」についてマーケティングマネージャの報告を受ける。
マーケティングマネージャによれば、過去1年間に保険金請求を行った契約者を対象として毎年行っている同調査は、今年、お客様の利便性をさらに向上させるため、回答方法を電話、Web、郵送の3通りから選べるようにオペレーションを改善させたという。CEOは、オペレーションの負荷増大を心配するが、マーケティングマネージャはこともなげに答えた。「アンケートは1種類だけ作成すればよく、あとは回答者のニーズに合わせて適切なフォームが自動生成されます。また回答データも回答方法にかかわらず1つのデータとしてまとめて保管できるようになったんですよ」と。 ユーザーの利便性が向上するにもかかわらず、業務量は増えないと説明を受けたCEOは感心しながら、用意されたWeb上の顧客満足度調査を自ら回答していく。回答した内容(満足度)がユニークなイメージによって表示される画面(画面1、2)が会場の大スクリーンに映された。
成果の一例として、保険請求審査の迅速化が顧客満足度を向上させた一方で、コールセンターの問い合わせ数が10%以上減少し、オペレーションコストが軽減されたことが挙げられた。実は、コールセンターへの問い合わせの内容の半数が、保険審査の進ちょく状況を確認するものであったという。保険金がおりるかどうかの連絡待ち期間が短縮されたおかげで、そうした問い合わせの電話の本数を減らすことができ、オペレーションコストの削減という成果を得られたというのだ。 保険請求審査に関するやり取りでは、オペレーターの質問に対する契約者の回答に応じて、リアルタイムでリスク度が判定される画面(画面3、4)がスクリーンに映された。保険請求内容のリスク度を判定するモデルは、コールセンターのオペレーションに組み込まれており、常に最新のデータに基づいて自動的に改善されていく。しかも、顧客の生の声、すなわちテキストデータをモデルに組み込むことで、審査の精度を向上させることが可能だ。もちろんそれは同社の収益増につながることを意味する。
こうして、古いやり方にこだわるエックス損保に対し、SP損保は、最新の技術を積極的に取り入れ、顧客の利便性の向上やオペレーションの改善に積極的に取り組み、目に見える成果につなげている「Predictive Enterprise」企業であることが、リアリティあふれるものとして来場者の目に映ったことだろう。
提供:エス・ピー・エス・エス株式会社 企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年7月28日 |
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